お月様が見てる 9 ページ24
.
今朝は、いつもより早く目覚めた。
シャワーを浴びて、コーヒーを淹れる。
秋の爽やかな風を感じながらお気に入りの薔薇を眺めて、
今日も綺麗だよ、
なんて話しかけているせいか、最近ますます美人になった。
自画自賛。笑
今日の仕事は開店から。
しかも、朝から海賊だ。
仮装をするのもあと数回になった。
一か月って、あっという間。
少し早いが、そろそろ家を出よう。
自転車を置いて裏口のドアを開けようとしたが、まだ鍵が開いていなかった。
やはり、少し早かったか。
キーケースから鍵を探す。
一部のスタッフしか持っていない鍵だ。
ドアを開けて入り、いくつかの電源をオンにしていく。
一番乗りの時だけのルーティンだった。
海賊が完成する頃、裏口のドアが開く音が聞こえた。
間もなくここに着替えに来る。
決して広くはないロッカールーム。
先にここを出ようとしたが、思ったより足音が早く近づいている。
ぶつからないように立ち止まる。
廊下の足音も止まった。
迷ったが、止まっているならこちらが動く方がいいだろう。
はい、裏目。
あちらも先に進む方を選んだらしい。
が、二人同時に足を止めた。
すんでのところでぶつかるところだった。
「…っと、ワリ…」
両手を上げてそこに止まっていたのは北山だ。
「あ…」
今日は開店から一緒なのか。
「…おはよ」
今日も北山はかわいい。
こういうのは何でいうんだっけ。
早起きは三文の徳?
「お先」
フロアで待ってるわ。
「あ、ああ。うん」
え。
何?
北山??
様子がおかしい。
「あ、ごめ。なんでもない…」
オレから逃げるように、北山はロッカールームに入っていった。
北山は、時々、こんな様子を見せる。
ドウシテ?
気になってロッカールームに戻ると、北山がロッカーにもたれかかっている。
よく見ると、左胸の辺りでシャツをぎゅっと握っていた。
「北山?大丈夫?」
肩に手を当てて顔を覗き込んだ。
顔色は問題ないように見える。
「胸を押さえてるから、ちょっと心配になった」
「え、あ、大…丈夫」
「無理するなよ」
肩をぽんと叩く。
もっと構いたい気持ちを抑えて、ロッカールームを離れた。
114人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月11日 2時