渡る世間に11 ページ17
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「ミーツ!」
さっきのを見ていたのか、目を輝かせて玉森が寄ってくる。
「何?」
「ねえ、どうしたの?」
「何かあった?」
「もしかして、ケンカでもしちゃった?」
右を向いても左を向いてもそちらに玉森がいる。
ケンカの件でも、誰と、とは言わない。
「いや、なんもねぇから!」
「そうかなぁ。
なんかいつものミツと違うよ?ねえ」
「たっ…タマ!なんでも面白がって行かないの。キタミツにだっていろいろあるんだから」
宮田がウザ絡みしている玉森を引っ張っていく。
助かったわ。ありがとな、宮田。
その時、フロアスタッフからオーダー声がした。
「レッド入りました!」
あ。
オレだ。行かなきゃ。
「あーい!レッド行きます!」
レッドとは、オレの衣装とキャラの略称。
アラジンとかマリオみたいに名前があるわけではなく、赤いフードをかぶっているからレッド。
世間では…
「赤ずきんちゃん行ってらっしゃーい!」
玉森が向こうのほうでヒラヒラと手を振る。
そう、オレは、赤ずきん。
自分では、選んでない。(ここ重要)
店長のNG指定を除いたら希望のものは残らず、帽子被りたいとだけ言ったら、帽子じゃなくてフードだった。しかも女の子。すん。
「レッドお願いしまーす」
カメラを持った藤ヶ谷が手を挙げている。
早く来いってサイン。
「お待たせしました」
テーブルで待っていた女性客から、
「かわいい〜」の声。
「ありがとうございます」
とだけ言っていつもの立ち位置で写真を撮った。
「かわいいから、これ待ち受けにしちゃお」
撮った写真を確かめて彼女たちはおしゃべりを始める。
オレと藤ヶ谷は声をかけてテーブルを離れた。
その時、何か音がしていたことに、オレは気づいていなかった。
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作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月11日 2時