渡る世間に8 ページ12
「オーダー！
カボチャのドリアとお化けサラダー！！」
「Oui、monsieur」
キャンペーン期間に入り、順調に季節の料理の注文が入っている。受けたオーダーをキッチンに通す声に、キッチンからもウィムッシュ！の返事がある。
お客さんにはコレがまた好評で、キャンペーン仕様のオーダーコールをSNSにUPする人もいる。コレに関して、店としてOKにしている。
キャンペーン商品には、ハロウィンカードが付いていて、帰るまでにコスプレフロアスタッフと一緒に撮った写真か、プチスイーツ(お化けクッキー)と引き換えることができる。
うちの店は、イケメン揃いと話題になっているだけあって、今のところお化けクッキーより写真の方が人気だ。
「アラジン入ります！」
あたかも料理の注文のようなそれは、フロアスタッフとの写真撮影の合図で、その格好をしたスタッフがテーブルに伺ってお客さんと一緒にインスタント写真を撮ってプレゼントする。
ただし、時間がかかるのと、その間スタッフがそちらにかかりきりにかるのとで、予約のお客さんのみのサービスだ。
「お待たせしました。本日はご来店ありがとうございます！」
アラジンに扮した玉森は笑顔で客に挨拶する。
「まず、こちらで撮影し、その後でお客様の携帯電話などで撮影いたします。」
撮影用スタッフが説明している間に、玉森が後方真ん中に移動する。
「撮影の合図は、Trick or Treatです。
では、皆さまよろしいでしょうか？
Trick or Treat！」
「ありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております」
推しスタッフと別れた客は今撮ったばかりの写真を眺めながらはしゃいでいる。
「リトルレッド、ジャック入ります！」
他人事のようにアラジンを見ていたオレは、呼び出しを受けて指名を受けたテーブルに向かう。
ジャックこと藤ヶ谷は他で接客しているから、とりあえずオレが先に向かう。
定型分で挨拶すると、客はおずおずと聞いてきた。
「あの、場所は真ん中でいいんですけど、お二人のポーズというか、こう入って欲しいみたいなのってやってもらえるんですか？」
「全てのご希望に添えるわけではありませんが、簡単なものでしたらできることもあるかも知れません」
「海賊さんが赤ずきんちゃんを人質に取ってるみたいなのできますか？」
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作者名：lettuce | 作成日時：2022年9月11日 2時
