渡る世間に7 ページ11
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「ミツ〜、着替え終わった?」
ロッカールームを覗きにきた玉森の目の前には、ネコの着ぐるみを着せられたオレと、オレを捕まえてる藤ヶ谷。
ネコ姿をしているうえに、藤ヶ谷からハグされているところを見られるなんて、顔から火が出そうどころか、穴を掘って地球の裏側まで逃げたい。
「かわいいじゃーん!」
ね、ガヤもそう思わない?
玉森はオレの頭を撫でながら藤ヶ谷に同意を求めた。
「うん、もうこれ離したくない」
「だよねー!じゃあもうコレでいっか」
「良くないっ!」
本人拒否ってるだろ!
少し考えて、藤ヶ谷が言う。
「タマ、オレやっぱヤだわ。北山がネコ着るの」
お!いいぞ藤ヶ谷!
「何で?かわいいじゃん」
「宮田が王子になってるのと同じ理由?」
ん?ドユコト?
「そっか。じゃ、やめよ!」
よくわかんないけど、ネコにならなくていいんだな。
ほっとしたのも束の間。
「ガヤ、コレは?」
ミツに似合いそう。
って、はぁぁ?
「タマ!それおかしいだろ!」
藤ヶ谷も言ってくれよ!
肩越しに藤ヶ谷の方を見上げると、口元に手を当てて何か考えている。
いや、何故そこ悩むとこじゃなくない?
この衣装、ジャンル違くね??
「中居さんがOKしてくれるなら、アリ」
「じゃ、リストに入れとこ」
「ちょっと待てって。
オレに拒否権ないのかよ」
着るのオレだぞ!
「じゃ、ガヤ、他に候補あったら教えてよ」
「オイ、無視かよ」
「わかった」
藤ヶ谷も、わかった、じゃねぇし!
玉森は店の方へ戻って行った。
「オレにも選ばせろっての」
よっこいしょ、と体を起こそうとすると、またホールドされた。
「北山、ちょっと待って」
「…ンだよ」
もういいだろ、着替えさせてくれよ。
背中の右の方で何かしているかと思ったら、目の前にスッと現れたスマホ。
「一緒に撮ろ」
「は?無理‼︎」
左手で抱き留められていたのに、サイドから両膝で固められ、伸ばした右手で自撮りの態勢に入る。
「撮ってくれなきゃキスするけど」
どっちがいい?
その選択肢がおかしいって後で思ったけど、
耳元で囁かれるからその時のオレは判断を誤った。
「うう……写真でイイデス」
「オッケ!」
嬉しそうな藤ヶ谷。
笑ってって言われるけど、そんなの無理。
オレは真っ赤になってる自分をごまかすのに必死だった。
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作者名:lettuce | 作成日時:2022年9月11日 2時