秋の空 [12] ページ13
「ぐだぐだ悩むの性に合わないから
単刀直入に訊くわ」
北山が切り出す。
「この前さ、オレにキスしたじゃん。
アレってどういう意味？」
言い淀むこともなく真っ直ぐな瞳でオレを見ている。
いつか訊かれると思っていたこと。
いつか話さなくてはいけないと思っていたこと。
なのに。
オレの中で明確な答えが見つかっていなくて。
「少し、話してもいい？」
北山は、うん、とだけ答える。
「あの日のオレはすごくイライラしていて…」
客のことでいろいろ悩んでもいたし、
気を配って気を遣って動いてくれる皆に
申し訳なく思うのに、
何にも解決できない自分に腹を立てて。
「それは、見ててなんとなくわかってた」
北山が相槌を打つように言葉を次いだ。
「そっか。」
バレないように行動してたつもりだったんだけど。
やっぱ北山にはわかっちゃうんだな。
「あの客が来てる時もさ、
いつもフォローしてくれてただろ」
「ん？…うん、まぁ、してなくもないかな」
北山は視線を彷徨わせた。
「オレの代わりに怒ってくれてさ」
ロッカールームでぷりぷり怒ってる姿を思い出す。
でも、自分はイライラの真っ只中にいて、
拾ったネームプレート貼って、
くるくる表情を変える北山を見てたら…
「うぁ！何すん…」
黙り込んでしまったオレの鼻を
北山はキュッと摘んだ。
「藤ヶ谷が話しづらいならいいよ。
でもさ、一個だけ聞きたい」
鼻を摘んだまま言う。
「おまえ、オレのコト好きなの？」
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作者名：lettuce | 作成日時：2022年9月3日 23時
