Act.38 ページ40
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「……夢。」
久々にあいつの夢を見た。自然と流れる涙に思わずため息を吐き、乱暴に目を擦った。
昨日の飲み会のあと、雰囲気がお通夜か、とツッコミたくなる感じになったので無理やりお開きにした。
携帯の電源は昨日落としてから寝たので、あの3人から連絡が入っているのかは知らない。
すでに時刻は昼近くで、休みでよかったと思うも、なんとなくモヤモヤする気持ちを晴らしたくて、シャワーを浴びる。それでも気持ちは晴れず、どちらかと言えばモヤモヤがさらに増すばかりで。
髪も乾かさないまま、作業部屋に行きギターを手に取る。音楽を鳴らせばモヤモヤが晴れるかもしれないと思い、思いついたメロディーを弾いた。
これいいな、と思ったものは楽譜に書き起こしたりしていたら、すでに3時過ぎていた。
お腹は空いていなかった。冷蔵庫からペットボトルの水を取り一気に煽る。起きてからとっていなかった水分が全身に染み渡るような気がする。
(音楽を鳴らしても気分が乗らない。誰かと話をしたい気分でもない。)
だから、久々にバイクに乗ろうと思った。
バイクに適した格好をして、携帯と財布だけを持ち外へ出た。
外はあたしの気持ちと同じような、曇り空で、今にも雨が降りそうだった。
どこへ行くかとかは何も決めずに、ただバイクを走らせた。
なんとなくで向かったのは海。この季節だし、この天気だから人はおらず、あたししかいなかった。
海風が冷たくて、吐いた息は白かった。
あいつときた海は、春の日差しを浴びて色んな人が海辺にいたな、と思った。
犬の散歩をする人。サーフィンをする人。はしゃぐ子供とそれを見る親。
あいつの周りには常に人がいたように思う。自分でポジティブだっていうぐらい、本当にポジティブで、でも根は闇しかなくて、描く絵も万人受けするような絵ではなかった。
でもあたしは、あいつの描く絵が好きだった。
あいつの内側を見せてもらえているようで、嬉しかった。
それなのに歌はすごくキラキラしていて、歌と絵と合わせてあいつなんだなって思えた。
思い出すたびに、あたしは前に進めない。
まだあいつを、思い出にしたくない。隣にいたい。
「……会いたい、」
自分で思うよりも、あいつのことが好きなんだ。
でもなんでだろう、なんであいつのことを思い出してるのにあたし、
(達央の顔が浮かぶんだろう)
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mameiyiteng3(プロフ) - りるとさん» ご指摘ありがとうございます、早速直させていただきます!申し訳ありませんでした。 (2020年2月14日 17時) (レス) id: a55d9f83ab (このIDを非表示/違反報告)
mameiyiteng3(プロフ) - Riさん» 遅くなり申し訳ありません!ご指摘いただきありがとうございます。曜日が確かに間違っていたので、直して掲載しております。申し訳ありませんでした。 (2020年2月14日 17時) (レス) id: a55d9f83ab (このIDを非表示/違反報告)
りると - act33にある宮野さんの名前の漢字なんですけど守じゃなくて真守なので直した方がいいかと思います。とても面白い作品なので楽しんで読んでいます。 (2020年2月14日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
Ri(プロフ) - act.30くらいで夜遊びの曜日なのですが、安元さんと江口さんが出ていらっしゃるのは、火曜日ではなく月曜日ではないでしょうか?お話、とても面白いです。 (2020年1月26日 11時) (レス) id: 6e0fe8bfcb (このIDを非表示/違反報告)
mameiyiteng3(プロフ) - misteriascatさん» ご指摘ありがとうございます。23話を非公開の状態にしていました…。 (2020年1月3日 21時) (レス) id: a55d9f83ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2019年12月8日 19時