らくがん【宮治】

23 ページ28

治side



「…相手が誰でも、俺はめでたく祝福するだけや」


「嘘つけ」


「嘘ちゃう」





強がんなや




そう言おうと思ったけど

ツムのまっすぐで力強い目を見ると、そんな言葉は喉の奥まで引っ込んだ



腹でもくくったような顔しとる







「…好きなんやろ」





こいつはAちゃんのこと好きなはず


近くで見とって、すぐわかんねん




「…好きなのはお前やろ」





それでも、こいつは頑なに口を割らない









どういうつもりや






そんな気遣いなら要らへんで




わざわざ譲ってもらわんでも、俺の力でAちゃん振り向かせるんや









それにお前、そんな性格ちゃうやろ



欲しいもんは手に入れるまで諦めんのちゃうんか







お前の諦めの悪さだけは


ええとこなんかもしれんって思っとったのに









なんかこのままは許せへん





お前の本音も言えや





不公平やぞ









気がつけば、俺はツムに対して


説得でもするかのように


話し始めていた









「……よくあるやん。たまたま。ほんっまにたまたま。


好きになった人が被ることとか。しかも、こんな身近で」

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す