第三十二話 ページ44
執事が傘を持って行き、色々話し込んだ後、美玖は凛凪邸を退出した。
傘一本でそこまで騒がなくてもいいのに。美玖は過保護過ぎると感想を抱いた。
「阿月んとこの餓鬼か?」
辺りをキョロキョロと見回す少年は、どうやら道に迷ったらしい。
一見少女に間違えられそうな容貌だ。美玖も初対面なら勘違いしていたかもしれない。
「おい、どうした?迷ったのか?」
急に話しかけられて驚いたらしく、肩を震わせて美玖から距離をとる。
「え、えぇっと、その…ご、ごめんなさい!」
何故か懺悔の言葉を口にすると足早に去ってしまった。
小さく舌打ちをする。まったく、道がわからないというなら、初めから言ってくれればいいのに。それに、わからないのなら、余計迷うに決まっている。
放っておきたかったが、致し方が無い。重度の溺愛ーーブラコンとも言うがーーであるAにそれが知られたら、面倒臭いことになるのは間違いない。
急いで深緑を探すが、これがなかなか見つからない。商店街にも、陰陽連本部にも、青陽院にも、居ないのだ。
「ったく、何処行ったんだよ…」
傘を差しつつ走るのは不便で、時折跳ねる泥がゴスロリに着く。
小さい頃からこんなんじゃ、Aの歳の時はどうなるのか。
海辺を走っていると、数人の男の子たちに囲まれた深緑、傘がいた。
「おい!何やってんだ!」
美玖の姿を確認するや否や、蜘蛛の子が散るように去っていく。
度胸も糞もない。
彼女はそう心の中で呟き、急いで傘に駆け寄る。砂埃を被った傘は、大事そうに何かを抱えていた。
「もう大丈夫だぞ。安心しな」
精一杯の笑顔で言ってみれば、まだビクつきながらも、今度はちゃんと答える。視線を傘の胸の辺りに移すと、目を見開いて言い放った。
「これは、これは駄目です!」
隠すように背中にそれを移動させた。
少々気になったが、これ以上詮索したら最悪泣いてしまうかもしれない。それは流石に困る。十二天将が子供を泣かせたとなればそれこそ一大事である。好奇心に蓋をして、優しく頭を撫でる。ふわふわとした撫で心地のいい髪を梳いてみると、擽ったそうに首を傾げた。
こうしてみれば、姉にそっくりだと本当に思う。
「さて、ねーちゃんが帰って来るまでに家に帰んなくちゃな」
気を許してくれたようで、手を差し出すと、小さな手が遠慮がちに触れた。
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どこんじょう(処罰対象) - 弓乃さん» こちらこそよろしくお願いします! (2019年3月22日 21時) (レス) id: 45a23aa5e3 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» 遅れてごめん!明けましておめでとう!ID違うけど私だよ!今年もよろしくお願いします!!! (2019年2月3日 16時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 新年明けましておめでとうございます!今年も期待して続きを待っています! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
どこんじょう - 弓乃さん» いえいえ!ってか、じぶんのほうが頑張らなきゃいけないっていう...展開は重要ですのでじっくり考えてください!私はいつでも暇なのでいつまでも待てます!過去編は長くてもいいんじゃないかな?過去編って重要だし。頑張ってください! (2018年12月29日 17時) (レス) id: 5e33bfab9e (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - どこんじょうさん» どこんじょうちゃん!お久だね。今ちょっと展開を考えてて‥‥‥全然更新できてなかったんだけど、どこんじょうちゃんがそう言ってくれるなら頑張ろうかな。有難う。感心であってるよ。過去編長くてすまんね。才能、かぁ。私なんかは全然だよ、でもありがとうね。 (2018年12月28日 17時) (レス) id: 7a5e1ee815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弓乃 | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/novel/mamamitu/
作成日時:2018年3月3日 20時