四話 ページ4
「―――どうしましたか?」
「っあ、何でもありません。昴さんってカッコイイなぁって思って」
「……何言ってるんですか、病み上がりに」
その反応が、初めて会った時と違うのは、私にはわからなかった。
赤井さんの気持ちが明美ちゃんと私で傾き始めているのが、私にはわからなかった。
もしわかっていたら、何とかできただろう。
もしわかっていたら、赤井さん愛が激しい私は諦められただろう。
―――でも、全部抱え込んでしまう彼は、それを私に言う事は無かった。
私は明美ちゃんと赤井さんの関係を認めて、なのに内心では認めたくない気持ちを引きずったまま。
赤井さんは私と明美ちゃんの気持ちの中で揺らめき、決まらない気持ちを引きずったまま。
その日はこうして終わり、気持ちは終わらぬままだった。
〇
その日は雨が降っていた。私は窓を通して、通り過ぎていく車を見ていた。
あと一週間ほどで退院だ。私があの傷で生きられたのは、多分赤井さんと安室くんのおかげだろう。そうじゃなかったら、今私は此処にいない。
「どうも。安室です。傷はまだ痛みますか?」
「安室く……さん、私は大丈夫です。安室さんこそありがとうございました」
「ふふっ。ため口で大丈夫ですよ、無理してる感じがありましたから」
「あ、そうなんだ。そういえばこの前昴さんが来たんだけど、それ以来来てなくて。何か情報耳に入ってない?」
「FBIの任務がまた入ったとか言って、忙しそうにしてましたよ」
そうか。ケガをしたとかそう言うわけじゃなくてよかった。
そうしてほっと一息ついた私を見て、安室さんは少し眉をひそめてしばらく口を開けていた。何を話すか悩んでいるらしい。
「……あの日何か、ありましたよね?」
「う、うん? そんなこと無いよ。ああ、昴さんがいつも通りかっこよかった!」
「そう言う事じゃありません。僕の得意が洞察力だと知っているでしょう? そんな無理した笑い方で僕をごまかせるとでも?」
「思ってない、思ってないけど、安室さんに言うべきことじゃないと思うし」
「貴女は僕の命の恩人です。ですから、借りを返す義務があるんですよ」
安室さんの話し方をしながら、それは降谷零の顔だった。
真剣な顔で私の右手を握る。
私の左手が強く布団の裾を握った。赤井さんが好きなんて、そんな事。
安室さんに言えるわけがないでしょう?
「どうせ赤井の事に対しての悩みでしょう。何なりと言ってみてください」
……この人の洞察力やっぱ神。
92人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
糖(プロフ) - maoさん» コメントありがとうございます。楽しみにしているといって頂けて嬉しいです。頑張って最後まできちんと終わらせる予定ですので、是非ご応援頂ければ幸いです<m(__)m> (2019年6月9日 23時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
mao - 続き楽しみにしています!更新頑張ってください!! (2019年6月5日 22時) (レス) id: ec98b22c92 (このIDを非表示/違反報告)
ぐらにゅー糖(プロフ) - 雪兎さん» バリバリ元気です(笑) (2018年6月7日 18時) (レス) id: a9cd84d524 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(プロフ) - ぐらにゅー糖さん?元気ですか? (2018年6月4日 22時) (レス) id: b712ea93b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ