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その12 ページ12




まずいまずい、非常にまずい。脳内で警鐘が鳴り響いていた。


確かに元々お母様もここにいることは知っていた。


社交界の花と呼ばれる現姫宮財閥当主である母は、母が出席するだけでそのパーティの品格が変わるとまで言われている。


そんな母が鈴木財閥が主催のパーティに参加しないわけがない。鈴木家とうちはかなり付き合いが長いのだから。


しかし先程も述べた通り母は社交界の花。パーティの間はずっと母は挨拶やら何やらで私が関わることはないだろうと高を括っていた。


が、今こうして接触を図ろうとしていた人物と母が歓談している。


とにかくこの状況を見られては何を言われるかわからない。


先輩、と声をかけてその場から離れようとした時、


「Aちゃん」


自分の名を呼ぶ澄んだソプラノがパーティの喧騒の中からはっきりと通った。


いや、もしかしたら私がそう聞こえただけかもしれない。


固唾を飲みながらお母様の方を振り返れば私と同じ色をした瞳を妖艶に細めていた。


こうなってしまったら仕方ない。


さて、ここからが勝負だ。いかにこの社交界という化かし合いに場馴れした母に、どれだけ真意を読み取られないかが重要である。


「御機嫌ようお母様、私に何か御用でも?」


「娘に声をかけるくらいいいじゃないの、ところでそちらの人は?」


母が細めたままの瞳を降谷先輩の方へ向けた。


まったく、建前と本音のギャップが恐ろしい。これが社交界という場なのだから仕方ないけれど。


「先輩です。たまたま会ったのでエスコートして頂いてるだけですよ」


「初めまして、安室透といいます」


「Aちゃんの母の姫宮楓子です。娘がお世話になってるみたいで」


「いえいえこちらこそ」


先輩もまた同じように、そう、同じように笑っていた。

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いちごきゃらめる(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです!続き気になります (2021年2月24日 3時) (レス) id: 654b6b5b60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:珠々菜 | 作成日時:2018年7月13日 0時

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