その13 ページ13
*°
少しすると母はまだ挨拶があるらしく会話もそこそこに切り上げてくれた。
しかし私は気付いていた。面白いものを見つけた時の姉とまったく同じ表情をしていたことに。変なところで似てるんだからこの母娘…。
「あ、そうそう安室くん。―――――――」
「え?」
すれ違い様、母が先輩の耳元で口を動かすのが見えた。生憎、読唇術なんかは会得してないためなんて言ってるかはわからなかった。
「先輩、ウチの母がすみません」
「別に謝ることは無いだろう」
嘘、先輩は母が建前に隠した本音に気付いていた。我が母ながら困ったことをしてくれる。
しかしながら先輩の返しもなかなかのものだった。伊達に安室透をやっている訳では無いということか。小さく呟いてみればギロリという効果音がぴったりに睨まれてしまった、おぉ、怖い怖い。
「母、普段はいい人なんですよ。ただ、こういう場所だとあんな感じになってしまって」
「それは仕方ないだろう、何せこれだけ金持ちが集まっていればな」
「ま、先輩も負けず劣らずでしたけど?」
「それはどうも」
はて、降谷零なのに珍しくいつもの嫌味が返ってこない。そのことにとてつもなく違和感を感じてしまった自分がいた。
「そういえば最後、母になんて言われたんですか?」
「さぁな。さて、ここからは別行動だ。もうお前に用はない」
「えっ!?あの人はもういいんですか!?」
「そういう事だ」
急に言われたことには驚いたが、解決したのならよかった。ただ、先輩の用済み発言はさすがに頭にきた。
「先輩、勝手にでしたが一応協力したのにその言い方はないんじゃないですか?」
どうせ先輩の事だから何か言い返してくるだろうと思っていたが返ってきたのは以外にも
「礼は後日な」
という言葉で、そう言い残して踵を返して行ってしまった。
…先輩はもしかしたら何か悪いものでも食べてしまったんじゃなかろうか。きっとそうだ、そうに違いない。でなければ天変地異の前触れ?
むず痒くなったのを振り払うように、先輩が去った方を見て数度首を横に振った。
1123人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちごきゃらめる(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです!続き気になります (2021年2月24日 3時) (レス) id: 654b6b5b60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:珠々菜 | 作成日時:2018年7月13日 0時