6.推しと気遣い ページ6
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「あれ」
「礼王先輩！？」
駅内の書店にて本日二度目の遭遇。これではまるで私が先輩をつけているみたいじゃないか。ううむ、否定できない。
「こんばんは、何か買いに来たの？」
「こんばんは……！今日好きな漫画の発売日なんです。ここなら大きいし、置いてあるかなあって」
仕事終わりにわざわざ、発売日に買いに来るなんてこのオタクが、なんてこと思われてはいないだろうか。いや、礼王先輩がそんなこと言うわけない。
などと一人で脳内会議を繰り広げていれば、先輩は楽しそうに笑っているから本当にずるい。
これだから夢見てしまうのだ。こんなの推すなという方が難しい。
「樹音が言ってたけど、高木ちゃん本当にアニメとか漫画とか大好きなんだね」
「あはは……引きました？」
「え、何で？むしろ教えて欲しいなあ。俺も好きだけどミーハーだし」
ニコッと笑う礼王先輩に、成り行きでおすすめの漫画を教えることになったのだが、これがまた難儀なもので。
どれだけメジャーなものでもマイナーなものでも、全てにおいてプラスの反応が返ってくるのだ。それも無理やり絞り出したお世辞のように気まずいものではなく、心からの表情付きで。
「いやーすごいね！こんな買い物するつもりじゃなかったよ」
へー面白そう、なんて気になったものを躊躇なく手に取るから、両手の紙袋が大変なことになっている。
「すみませんなんか、無理やり買い物させたみたいに……」
「なんで高木ちゃんが謝んのよー」
先輩だからとか推しだからとか色々理由はあるけど、何となく彼は納得しないような気がして言えなかった。
──予想はしていたことだけれど、先輩はやっぱり家まで送る気満々だったようで、さも当然のように私の最寄りで降りて改札を通る。
「いいのに、何度も悪いですよ……」
「いいの。俺がしたいからしてるだけだよ」
「……そういうところですよ」
「えー、何がよぉ」
電子掲示板が知らせる次の電車到着時刻はまだまだ先で、選択肢はないのだと思う。観念して後を追うと、彼は満足そうに歩き始めた。
「高木ちゃんってさ、」
別れ際、突然手を引かれて振り返る。離す暇もなく、礼王先輩は口を開いた。
「すっごく気を遣うよね、人に」
「え？」
「それって誰にでもなの？それとも、俺にだけ？」
彼は微笑んだ。少し、悲しそうに。
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塩 - 初めてコメントさせていただきます！塩です！枕野れいさんの小説好きすぎて普段コメントなんてしたことないのに思わずしてしまいました、、、笑 枕野れいさんの書く樹音さいっこうにどタイプです！！これからも頑張ってください！陰ながら応援しています♡ (12月17日 2時) (
レス) id: 99215fcdd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：枕野れい | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ruki/
作成日時：2023年2月4日 18時
