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「集中しろ」


隣から脳天めがけてチョップが繰り出される。あだっ、なんて可愛げの欠けらも無い声とともに池亀先輩を睨みつけると、彼は珍しく真剣な顔でキーボードを叩いていた。


「何」
「暴力はんた〜い……」
「間抜けな顔でぼーっとしてる高木が悪い。それ明日まででしょ、早くやんなよ」
「間抜っ……他に言いようあるでしょ」


項垂れながら自身のPCに視線を戻すと、明日までと頼まれていた資料作成が一ミリも進んでいないことに気づく。それどころか、ああああ、などと意味のない文字が羅列されている。
いやいつ打ったんだ、と過去の自分にツッコミつつ削除キーを無心で長押しした。


「はあ……、……ねえ夜時間あんの」
「……」
「高木に言ってんだよ」


本日二度目の脳天チョップ。
もはや集中させる気ないだろうと先程同様睨みあげれば、今度はしっかりとこちらを向いていた。
どこか呆れたような、でもどこか愛おしいものを見るようなその目は、本当にずるい。私が断れないのを知って、そういう顔をするのだ。


「……頑張れば」
「おっけ、じゃあ早くやって」


一瞬だけ微笑んでから、資料を持って立ち上がる。意地悪な先輩が何故あんなにもキャーキャーと騒がれるのか、何となく分かった気がした。



──………



「お疲れ様」


声につられて顔を上げると、コートを羽織って帰宅の準備を済ませた池亀先輩が立っていた。
集中していたからか、定時を過ぎていることに今気がつく。


「明日で終わりそう?」
「あ、はいなんとか。待っててくれたんですか?」
「いや夜空いてるかって聞いたよね?早く行くよ」
「え、ちょっと……!」


デスクにはまだ資料やら筆記用具やらが散乱しているというのに歩を進め始める先輩の背中を、最低限のものだけまとめ慌てて追いかける。
行くよも何も、目的地すら聞いていないのですが。


「普通に電車乗っちゃいましたけどこれどこ向かってるんですか」
「ん〜……イイところ?」


長身の彼に倣って隣の吊革を掴むと、それはもう、それはもう生き生きとした悪い顔で笑う。
何故疑いもせずノコノコ着いてきてしまったのかと、数時間前の自分を後悔するのだった。


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………

ほんっとに更新遅くてすみません、、、

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- 初めてコメントさせていただきます!塩です!枕野れいさんの小説好きすぎて普段コメントなんてしたことないのに思わずしてしまいました、、、笑 枕野れいさんの書く樹音さいっこうにどタイプです!!これからも頑張ってください!陰ながら応援しています♡ (12月17日 2時) (レス) id: 99215fcdd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:枕野れい | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ruki/  
作成日時:2023年2月4日 18時

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