#2 ページ36
彼が右手に持っていたのは、私が1番嫌いな物、“蛾“だった。蝶に似たフォルムだが、夜になると電灯に群がる其れは如何しても克服できない。
「…蛾は、スピリチュアルの世界では嫉妬の象徴なんです。私、自分でも抑え切れないくらいトントンさんに嫉妬してしまって…ええ、仕事だって分かってます。それにAさんがそんな事をしないのも、トントンさんが誠実なお方なのも。
ですが、ですが！この思いを如何する事も出来なくて！Aさんにこの苦しさを分かって頂きたいのです。この1週間、ずっとこの子を大切に育てました。Aさんに食べて頂くので、処理もキチンとしました。お願いです、お願いです、この気持ちを分かってください！」
今にも泣き出しそうなエーミールに謝り続けた。ごめん、御免なさい。お願いやめて。しかしそんな願いも虚しく、蛾を口内へ押し込まれた。吐き出そうとするが彼の唇で出口が塞がれ、唾液とともに流し込まれる。
手足をバタバタと動かし抵抗するが、彼だって男だ、びくともしない。彼の舌が侵入してきた事に驚き、そのままソレを呑み込んでしまった。
「え、えへへ…私の嫉妬、理解して頂けました？御免なさい、でも今、とっても嬉しいです！あ、紅茶が冷めてしまいますね、気分が悪いのなら私が飲ませて差し上げます。」
涙が止まらず、放心状態の私の上半身を起こした彼はティーポットからカップへと紅茶を注いだ。ティーカップの内側に紅茶の
2人ともゴールドは躊躇いがあったけれど、カフェで飲んだ紅茶に映るゴールデンリングを見て、金色も良いなって思ったんだっけ。ねぇ、エーミール、いったい何処で間違えたの？
彼がカップを持った事でリングは歪んでしまった。そのままエーミールは紅茶を口に含み、私に与える。いつも通りの、彼の味。今頃彼の”嫉妬“は胃に到達し消化されているんだろうか。
エーミールは心底幸せそうに笑い、私のお腹をひと撫でした。
［赤］人間の尊厳について天使が考えた事→←［茶］酸いも甘いも嫉妬も呑み込んで
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1560人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にあ - 待ってコメ欄に大好きな作者様がいるんだけど…いつも楽しく読ませて頂いてます作品更新頑張って下さい誠さんみそ漬けキュウリで殴るさん（限界オタク） (2022年2月26日 14時) (
レス) @page26 id: c982b0a7d0 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - あれ、もしかして40ページのtnと夢主ちゃんが住んでる家が高層マンションなのって逃げ出さないようにする為だったり…？誠さんのお話表現とかが美しすぎて本当に好きです… (2022年2月22日 7時) (レス) @page40 id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
誠(プロフ) - 紫紅兎さん» ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです… (2020年12月26日 18時) (レス) id: b57bb5d927 (このIDを非表示/違反報告)
紫紅兎(プロフ) - 虫のeさんのお話がｯｯ好きすぎて…！！毎日朝昼晩と読ませていただいております…呪いをモチーフにしつつ…儚さもあり…誠さん天才か何かですか…まって尊いがすぎますよ…更新楽しみにしております…誠さんのペースで頑張って下さい (2020年12月26日 11時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
( ・∇・) - ページ40のお鍋が冷めるシーンが人の恋を表している感じがしてとても面白かったです！ (2020年11月15日 10時) (レス) id: fdab07ad69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：誠
| 作者ホームページ：http://around-the-clock
作成日時：2020年7月17日 18時
