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「Aちゃん、そろそろ起きれるかな?ご飯だよ〜」
ぽんぽんと肩を叩かれ、意識が微睡みから浮かび上がった。こんなに優しく起こしてもらったのはいつぶりかな。小さい頃は、お母さんもお父さんも、私に笑いかけてくれていたのに。
ゆっくりと目を開けると、ペ神さんと、それから白い服の人が見えた。
「おはよう、Aちゃん、と言っても夜なんだけどね。こっちはひとらん、ご飯持ってきてくれたんだよ〜。ちょっとずつで良いから人馴れしていこうね。」
ひとらんと呼ばれた白いお兄さんは黒髪黒目で、如何にも日本人という感じだった。やっと普通の人に会えた気がして、少し嬉しい。
「Aって呼んでいいかな?正式にはひとらんらんなんだけど、長いからね、ひとらんで良いよ。ご飯持ってきたんだけど食べれそう?」
差し出されたお盆には、お出汁の良い香りがするおじやと綺麗な卵焼き、小鉢に盛られた漬物が乗っていた。流石にお腹が空いたので、食べれそうと答える。近くの椅子に移動すると、ひとらんさんに満足そうに微笑まれた。
「頂きます。」
誘拐犯(否、敵かもしれない。でも誘拐犯の方がしっくりくる)にご飯を差し出された時、何て言って食べるのが普通なんだろう。折角作って貰ったので、一応挨拶はしたけれど。
「美味しい?出汁とかこだわってさ、特に卵焼きは自信作なんだよ。Aって甘いもの好きだよね、砂糖を多めに入れて甘くしたんだ。Aのお母さんの作るやつ、甘く無さそうだよね。これの方が好きだと思うんだけど。」
さらりと凄いことを言ってのけたな、嚥下しようと思った卵焼きが喉に詰まりそうになった。お母さんの卵焼きなんてもう何年も食べてないけれど、記憶を辿ると、確かに甘くは無かったな。
自身の生みの親よりもひとらんさんの方が私の好みを知っていて、やっぱりお母さんは私の事を好きじゃ無かったのかなって思う。…だめだ、ペースに流されちゃいけない。
取り敢えず適当に頷いて食べれる所まで食べた。誰かの手料理なんていつぶりだろうか。お母さんは、とまた母の事を考えそうになって食事を切り上げる。ご馳走様でした。
「お粗末様でした。今日は軽めにしたけど、明日からはちゃんとしたご飯食べようね。Aの好きなオムライスが良いかな。リクエストがあったら何でも言ってね、作ってあげる。」
やめてよ。お母さんは、私がオムライス好きなの知らないのに。
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ゆう - 幸せなハッピーエンド(?)になって良かったです!! (5月22日 22時) (レス) @page42 id: f98c154ca8 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - 上から目線失礼致しました (4月27日 23時) (レス) id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
はゆり - ハッピーエンド感が漂ってますけどなんて言うんやろ深く?見たら意外とバッド?エンドですね!まぁ夢主ちゃんや、d!の人達が幸せなら私は何でも良いですけど。 面白い作品ありがとうございました! 他の作品も好きです!これからも応援しています。頑張ってください (4月27日 23時) (レス) @page42 id: 6422253908 (このIDを非表示/違反報告)
杏豆 - とってもおもしろかったです!素敵な作品ありがとうございました! (2022年9月3日 11時) (レス) @page43 id: d80eb34582 (このIDを非表示/違反報告)
きつね君。(プロフ) - コメ失礼します。大好物が詰まりに詰まっていて無事昇天することができました!!素敵な作品をありがとうございます!! (2022年8月6日 6時) (レス) @page43 id: f4cd021470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:誠 | 作者ホームページ:http://around-the-clock
作成日時:2020年7月22日 21時