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「颯(はやて)」
ほとんど回っていない頭に声が響く。
自分の名前を呼ばれていることに気づき、ゆるゆると顔を上げるまでに、少し時間を有した。
「相変わらずだな」
視界に入るのは、ザ・スポーツ少年って感じの男の苦笑。
そんな彼のセリフに、俺は覚醒しきってない意識の中、曖昧な返答をした。
彼はやれやれと肩を掠めると、
「頭良いからってそんなんだとだめだぞー」
と、いたずらな笑みを浮かべた。
指を立ててニッと笑う仕草は180儷瓩た板垢砲發かわらずしっくりきていた。
程よく日に焼けた肌が印象的な所謂イケメン。
人好きのする性格で、部活はレギュラー(確かテニス部だったか)、頭も良い方。
人生勝ち組かって感じの人気者______八神司。
そんな司は「前」も「今」も俺の親友だ。
「わーってるよ」
俺は回らない呂律で生返事をする。
司は困ったように苦笑を漏らすと、
「なんか考え込んでるみたいだけどさ、無理すんなよ。」
と声を掛けた。
その言葉で一気に目が覚めた。
そーゆーのらしくねーから、と頰をかく司に俺は、良いやつなんだよな…としみじみ感じた。
そんな司に甘えて何も言わない俺はきっと卑怯者なんだろう。
あぁ、でも二度目の時点で反則か。
せめてもの罪滅ぼしなのか、
「司、ちょっと勉強しよーぜ」
そんなことを呟いた。
「頭良いくせに何言ってんだよ」
唐突な俺の言葉にちょっと笑いながらも応戦した。
「うっせ。物理だ、物理。」
と教科書を取り出し、ページを開く。
「前」、教科書の物理の抜き打ちテストで、「点数良くなかったー」と司が言っていたのを覚えていた。
「ちょ!俺、物理苦手なんだけど!?嫌がらせかよー」
司はそう、愚痴垂れる
俺は、まあな、とそんな司に対し、はにかんで見せた。
未来を変える。
そんな大仰なことは出来ない非力な俺でも、この程度の反抗ぐらいさせてくれたって良いだろ、と誰に言うでも無いのに言い訳がましく思った。
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作者名:紅月まこと | 作成日時:2018年9月23日 0時