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side 赤
「浮気されるのも、自分がちゃんとせんからあかんのやないかって、気にしとったわ」
自分に可愛げがないって思い詰めてたあの夜の、病み上がりの彼女の顔を思い出す。
「ちゃんとって、なに?」
「重い女と思われたないんやて」
「正解やん。束縛されんから自由やし」
「っんまにっ!」
携帯灰皿に吸い殻をねじ込んで、
大倉を見上げる。
「睨まんといてぇ」
反省の色のない柔らかな物腰の大倉。
暖簾に腕押し、というのがしっくりくる。
「Aはいろいろちょうどいいねん。
そやから、す ばるくんにやらんよ」
伸びた前髪を指でさらっと払う仕草。
終始穏やかだった大倉の目の色が変わったように見えた。
「A、俺の言うことなんでも聞くねん」
声は低く響いて。
「なんでも…?」
「なんでも────知っとるんやないの?」
試すような笑顔と冷ややかな瞳。
「な、にを」
「知っとるから、そんなに怒っとるんやと思うてた」
Aはあんなに隠そうとしてて。
本人のおらんとこで話すことやないし。
「これ以上、あいつを縛り付けんとって」
「簡単に手放したないってのは言うとくわ」
煙草を消して、先に店に戻る背中を見送った。
・
二次会は、明日帰るからと断って、
早々にホテルに戻る。
あの後宴会に戻ると、
速水さんの隣には大倉が座って、
俺に気づいた速水さんはこちらを見上げた。
戻った時すぐに見かけた大倉に向けられてたかわいい笑顔じゃなく、半分困ったような表情で。
そっから、
正直に答えん方がよかったんやないかって。
あんなええ子を悩ませるだけやのに。
自問自答、繰り返しながら帰ってきた。
後から嘘はわかるから、嘘はつきとうない。
「元気で頑張ってな!」
「渋谷さんもお元気で。またお仕事ご一緒できる日が来たら、よろしくお願いします」
「おん。ほなな」
周りの目があるとこで、
なんとか交わした別れの挨拶。
いくら考えても、彼女の心を軽くする言葉は見つからんし、
軽くできるのは大倉だけやって気づいて、
────イヤホンから確実に音漏れしとるわってくらいに────音量を上げて、寝転んだ。
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まこ(プロフ) - sangozygoさん» 大倉担のさんごさんに喜んで頂けているなら、本望です!手探りのクズ倉くんですが、今後もよろしくお願いいたしますw (2019年1月19日 18時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
sangozygo(プロフ) - わわわーーーーん!!クズ倉くん最高過ぎてたまりません!!!通知来る度に飛んで来て読んでます!! (2019年1月19日 15時) (レス) id: b426f69b31 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - randyeeeeeeeさん» 昨日、下書きの保存を間違ってかなりの時間に1話飛ばしたのを読んで頂いてしまったようだったので、そこ周辺まで一気に更新したんです(^_^; クソ倉くん、かなりクズですが、喜んでいただけてるならばこのまま突き進みますwコメント嬉しいです。ありがとうございます! (2019年1月19日 10時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
randyeeeeeee(プロフ) - 返信いただき嬉しいですー!毎朝の日課になっていて、今日は1話じゃなかったのでご褒美もらった気分ですw!クソ倉くん…しっかりと反省したまえ(笑)と思いながらも乗り越えてー!と応援しちゃっていますw楽しみにしています。更新頑張ってください! (2019年1月19日 8時) (レス) id: a02fcd29a4 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - neko58910さん» ありがとうございます!考え出すと更新が止まりますw嬉しいコメントを頂いて、励みになります。間が空くかもしれないですが、これからも更新していきますので、よろしくお願いします。 (2019年1月19日 0時) (レス) id: 665cb48fe5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まこ | 作成日時:2018年11月5日 18時