検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:101,457 hit

明後日まで。 ページ21

恋に落ちたのだと、一度自覚してしまえば後はもう早かった。坂から転がり落ちるみたいに私の中の恋心は大きくなって、自覚してたった一日でどうしようもないくらい、サワムラ先輩の事が好きになってしまっていた。

このままだと日常生活に支障が出るのも時間の問題かもしれない。昨日の部活はなんとか集中出来たけど、帰り道なんて意識のしすぎで挙動がおかしかった。そんな私を先輩は心配してくれて、その心配ですら嬉しくて、本当にヤバい。

今は仮入部だから良いけど、入部したらどうなるんだと考えて、ハッとする。

私、今入部する前提で考えてた。

いつの間にかバレー部で過ごす時間が大切になっている自分がいる。人見知りで、人とコミュニケーションをとることを極力避ける私が。

ため息ついて、私は先程武田先生から手渡されたA4サイズのプリントをみつめる。

『十河さん、これ渡しそびれていました。仮入部期間は明後日までなので、それまでにお願いします』

そう言って先生が差し出したのは、本入部届けだった。無言で小さく会釈しながら受け取る私を見て、先生は口を開く。

『迷ってますね』

疑問形でもなく確定で聞いてくるのが武田先生らしかった。視線を逸らしながら頷くと、先生はふっと笑う。

『楽しいですか?』

........再度頷くと、武田先生は幼い顔の割に大人な表情を見せて、それは良かったです、と言って去ってしまった。

前までなら、すみません入部するつもりは無いです、と言って突き返すつもりだったものだ。それを出来なかったのも、今こんなにも迷っているのも。

ふぅ、と息を吐いて、私は教室へ戻った。悠ちゃんが何だったの?と聞いてきたから、プリントを見せれば驚いた顔をした。

「入るの?」
「さぁ...........どうなんだろう.......」

自分の事なのに煮え切らない言葉を紡げば、悠ちゃんはまぁ落ち着いて考えなよ、と私の肩をポンと叩いた。

「Aちゃんがマネージャーって、何か似合うかもね」
「どういう事.......似合わないよ」
「でも、仮入部行くのは嫌がってないじゃん」

なんだかその言葉に核心を突かれたような気がして居心地が悪い。う、と詰まる私に悠ちゃんはくすくすと笑って、

「そういう事なんじゃないの」

と大変楽しそうだった。ちなみに彼女は女子バスケットボール部である。ショートカットが良く似合う彼女は、時々射貫くみたいな発言をする時がある。

「そういう事なのかなぁ」

机に突っ伏す私に、笑い声を振り掛けながら悠ちゃんは「Aちゃん次第だからなぁ」と私の髪を掬った。

誰?→←この感情の正体。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (155 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
527人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちんすこう - 更新しないんですか?凄く楽しみ待ってます。数ある大地さんのお話の中で一番好きです! (2020年5月12日 10時) (レス) id: 9e27674b7b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 草さん» 返信遅れてしまって申し訳ありません。そうなんですね・・・!知識不足でした、ありがとうございます。大地さん大好きなので我慢出来ずに書いちゃいました。読みやすいと言っていただけて安心しました。妬いちゃう大地さん難しかったので萌えて頂けてなによりです。 (2019年11月5日 21時) (レス) id: 3e7d8a8bee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 早生まれは1/1から4/1で、遅生まれが4/2から12/31なので三月生まれの夢主は遅生まれではなく早生まれですね。大地さん夢珍しい上に文が読みやすいです。妬くところ大地さん普通の高校生で萌えました。 (2019年11月2日 23時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年9月8日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。