明後日まで。 ページ21
恋に落ちたのだと、一度自覚してしまえば後はもう早かった。坂から転がり落ちるみたいに私の中の恋心は大きくなって、自覚してたった一日でどうしようもないくらい、サワムラ先輩の事が好きになってしまっていた。
このままだと日常生活に支障が出るのも時間の問題かもしれない。昨日の部活はなんとか集中出来たけど、帰り道なんて意識のしすぎで挙動がおかしかった。そんな私を先輩は心配してくれて、その心配ですら嬉しくて、本当にヤバい。
今は仮入部だから良いけど、入部したらどうなるんだと考えて、ハッとする。
私、今入部する前提で考えてた。
いつの間にかバレー部で過ごす時間が大切になっている自分がいる。人見知りで、人とコミュニケーションをとることを極力避ける私が。
ため息ついて、私は先程武田先生から手渡されたA4サイズのプリントをみつめる。
『十河さん、これ渡しそびれていました。仮入部期間は明後日までなので、それまでにお願いします』
そう言って先生が差し出したのは、本入部届けだった。無言で小さく会釈しながら受け取る私を見て、先生は口を開く。
『迷ってますね』
疑問形でもなく確定で聞いてくるのが武田先生らしかった。視線を逸らしながら頷くと、先生はふっと笑う。
『楽しいですか?』
........再度頷くと、武田先生は幼い顔の割に大人な表情を見せて、それは良かったです、と言って去ってしまった。
前までなら、すみません入部するつもりは無いです、と言って突き返すつもりだったものだ。それを出来なかったのも、今こんなにも迷っているのも。
ふぅ、と息を吐いて、私は教室へ戻った。悠ちゃんが何だったの?と聞いてきたから、プリントを見せれば驚いた顔をした。
「入るの?」
「さぁ...........どうなんだろう.......」
自分の事なのに煮え切らない言葉を紡げば、悠ちゃんはまぁ落ち着いて考えなよ、と私の肩をポンと叩いた。
「Aちゃんがマネージャーって、何か似合うかもね」
「どういう事.......似合わないよ」
「でも、仮入部行くのは嫌がってないじゃん」
なんだかその言葉に核心を突かれたような気がして居心地が悪い。う、と詰まる私に悠ちゃんはくすくすと笑って、
「そういう事なんじゃないの」
と大変楽しそうだった。ちなみに彼女は女子バスケットボール部である。ショートカットが良く似合う彼女は、時々射貫くみたいな発言をする時がある。
「そういう事なのかなぁ」
机に突っ伏す私に、笑い声を振り掛けながら悠ちゃんは「Aちゃん次第だからなぁ」と私の髪を掬った。
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ちんすこう - 更新しないんですか?凄く楽しみ待ってます。数ある大地さんのお話の中で一番好きです! (2020年5月12日 10時) (レス) id: 9e27674b7b (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - 草さん» 返信遅れてしまって申し訳ありません。そうなんですね・・・!知識不足でした、ありがとうございます。大地さん大好きなので我慢出来ずに書いちゃいました。読みやすいと言っていただけて安心しました。妬いちゃう大地さん難しかったので萌えて頂けてなによりです。 (2019年11月5日 21時) (レス) id: 3e7d8a8bee (このIDを非表示/違反報告)
草(プロフ) - 早生まれは1/1から4/1で、遅生まれが4/2から12/31なので三月生まれの夢主は遅生まれではなく早生まれですね。大地さん夢珍しい上に文が読みやすいです。妬くところ大地さん普通の高校生で萌えました。 (2019年11月2日 23時) (レス) id: 59c85b2532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏 | 作成日時:2019年9月8日 20時