ビスケット -seiji.K. ページ3
"恋"時々"意地悪"
ーーー
『スカート似合う？』
買ったばかりのスカートに気付いて欲しくて、
自分からふざけてみたの。
だけど、あなたは一言。
「似合わん。笑」
の、それだけ。
私に興味が無いことぐらいは分かってるつもりだけど、
好きな人の前では一番ベストな私でいたいじゃない。
なのに、それだけなの？
ねぇ？自分ばかりが恋してると思わないで。
誠司が気になってるあの人みたいには、
しなやかに歩くことは出来ないけど、
いつも君を思ってる強い気持ちじゃ足りない？
人の気持ちもビスケットみたいに容易く半分コに出来たら、
辛くないのにね？
その人と私と半分コし合えたら、
苦しむことなどしなくてもいいのに。
そんなバカなことまで考えてしまうぐらい、
誠司が好きなんだよ。
「明日ヒマ？ってかいつまでいんの？」
『何で？明後日には京都に帰るよ。』
「そっか。いや、観たい映画があって。笑」
『1人では入りづらいからついて来いと？笑』
「バレた？笑」
きっと、明日見る映画の内容なんて覚えられないだろうなぁ。
『あ、そう言えばこの間、
"Aキレイになったね"って言われちゃった。笑』
「ふーん。」
ふーん、か。
それがどうしてなんてことは聞かないんだね。
急に話の途中で誠司のiPhoneがテーブルの上で、
小刻みに揺れる。慌てて「悪い。」と席から離れる彼。
"誰？"と聞くまでもなく誠司の意中の人だと分かってしまう。
ねぇ？
あなたといる時が一番幸せだけど、一番悲しくもなるよ？
「ごめん。」
『いいよ。笑』
無理して作った笑顔に誠司は気付かない。
誠司と店を出て、夜風が私と誠司の頬を冷たく凍らせる。
でも、この手を差し伸べて暖めることは出来ない。
「Aの好きな道選んで。」
『え？道？』
「右に行けばAが今夜予約してるホテルがある。
左に行けば俺が住んでるマンションがある。
どっちがいい？」
『何それ。笑 んー。笑』
「左にすれば？」
『え？』
「…もう少し一緒にいたい。」
『あのさ、言う相手間違ってない？笑』
「誰と？」
『誠司の、好きな、ひと？』
「やからAに言ったんやけど？」
『え？』
「俺、ずっとAが好きやで?」
『さ、さっき掛かってきた電話は？』
「あー、あれ？銀さん。緊張してへんか？って、
ただの冷やかし電話。ったくあの人は、笑」
と、照れくさそうに笑う彼。
勘違いから始まる恋も悪くないね。
なんて、
いつかの雨の日 -takuya.N-→←空の旅 -shohei.O-
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作者名：haru | 作成日時：2020年12月22日 0時
