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空の旅 -shohei.O- ページ2

泣き顔を、
笑顔に変えたい。

ーーー

たった一つ。
大きな期待という名の夢を荷物に詰め込み、
旅立とうとした日、僕とぶつかって来た人がいた。

それがAさんとの出会いだった。



『待って、行かないでー!』



人で賑わう空港のロビーで一際目立つ女性。
彼女は振り返らない男性を追いかけて、
呼び止めようとしている。


思わず僕はその女性の腕を咄嗟に掴んだ。


「追わない方がいいよ。」

『はな…して…』


涙を溜めて僕を睨み付ける彼女。


「人間、引かなきゃいけない時もあると思う。」

『あんた、友達に恋人を取られたことある?』

「え?」

『ごめん、何でもない。』


出口ゲートに向かう彼女を何故か引き止めてしまった。


『何?』

「帰るの?」

『そう。…腕、離して。』

「あ、ごめん。」

『さっき、』

「ん?」


『人間引き際が肝心って言ってたけど、

どういう意味?あんたも恋人を友達に恋人を取られたことあるの?

自分にも言ってる様に聞こえたから…』




「取られたことはないですよ。

ただ、ありますよ。失恋したこと。

だから、追わない方がいいと思ったんです。

失恋した時の悲しみは皆、同じですから。」



『これからどこに行くの?』


スーツケースと大きなカバンを抱えた僕を、
下から上までゆっくり見る彼女。



「アメリカに。」

『何をしに?』

「自分の力試しに、かな?笑」

『そう。試せたらいいね。』


「変わらなきゃいけないんです。

もっと強く、もっともっと成長する為に。笑」



『"成長"か。いい言葉。

ありがとう。えーっと、』



「僕の名前は大谷翔平。そっちは?」

『A』

「また会えるかな?」

『どうだろう?

じゃあね、大谷翔平くん。笑』









この世界で、
色んな別れを当たり前の様に見てきたけど、
あの時の"A"という女性の綺麗な瞳が、
どうしても頭から離れなかった。


Aさんがテレビか何かで僕を見て驚くぐらい、
凄い野球選手になってみせる。
それまで僕のことをどうか覚えてて。






「翔平、出発する時間だ。」
「今、行きます。」





じゃあね、Aさん。
次会う時はとびっきりの笑顔を見せて。

ビスケット -seiji.K.→←淡雪 -haruki.N-



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作者名:haru | 作成日時:2020年12月22日 0時

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