18 銀髪の男 ページ18
side 桃
感情が高ぶっていたせいで、
階段を上がってくる足音が聞こえんかった。
「望、帰ったのか」
「、は、はいっ」
突然の、ドアの向こうの声に体が揺れた。
どうしよう、なにも用意してない、
急いで図書室からまた借りてきた本を取り出しても、もう遅い。
「入るよ」
「・・あ、は、」
返事をする前にいつもドアが開く。
ドアを開けて目の前に現れたとうさんは
いつも自分自身と会話をしとるように感じる。
立ち上がる隙もないほど、
ベッドに腰かけた自分の膝と、触れるような位置から、おれのつむじを見下ろす。
「・・・あ、あの、」
小刻みに体が震えてまう。
どうしても。いつまでも。
「今日は、遅かったな」
「・・・・はい、・・・す、すみません、」
謝る必要、あるんやろうか。
わからん、思考するよりも先に口が勝手に動く。
「・・・目が赤いぞ
今日は何してた？」
「・・・はい、あの、と図書室で、」
泣いとったことすら忘れていた。
今さら遅いのに、目元を手で隠す。
「とうさんな
お前が銀髪の、男と居たの、窓から見たよ」
相変わらずおれの話も聞いてへん
とうさんから流星の存在に触れられて
何だか
絶望したような気分になった。
「・・・と、・・・友達、です」
「・・・・友達・・・？」
疑うような、不思議そうな、信じられないというような、声と表情、
思わず目をそらす。
「ああいうのがタイプなのか？」
「は、はい・・？」
「ああいう男が、好きなのか？」
一足遅れて理解したその意味に、
顔の表面がかあっと熱を持つのを感じた。
「、・・・ッ・・、」
お前なんかと、一緒にすんなや
とっさに思った言葉が、声にならない。
流星の顔が浮かぶ。
これ以上同じ空間にいたくない、
思うのと同時に立ち上がると、
──立ち上がったはずの体は鎖骨の辺りを手のひらで押し返されて
両足の踏ん張りも利かずに、呆気なく、ベッドに倒れ込んだ。
ほんの数分前、蒸し暑いとさえ感じていたこの部屋で、
触れられた部分から、凍えるような寒気が全身に伝う。
嘘や、嘘であってほしいと
今まで何度も願って
今まで何度も、叶わんかったけど。
「・・・・・や、・・・やめてくださっ・・・」
逃れても逃れても、
ベッドの上で、背中はすぐに壁にぶつかる。
とうさんが膝をついて乗り上げた重みでベッドのスプリングが軋む音も
頬を触られて、目を見つめられて。
もう、聞こえない。
─────
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まいん(プロフ) - naさん» ありがとうございます。もう忘れ去られてると思ってるので嬉しいです。お時間割いて見ていただいてわざわざコメントまで、本当にありがとうございました。 (2020年5月18日 23時) (
レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
na - はじめまして。このお話が本当に面白くて絶対に完結させてほしいです。 (2020年5月2日 4時) (レス) id: 195cac4769 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ありがとうごさいます。もう本当にそんな風に言っていただけて身に余る程幸せです。短編集も見ていただいて有り難いとしかいいようがありません。浮かれた勢いで調子乗って更新してしまったので、またお時間あるときにでも良ければ見てやってくださいね。 (2019年7月18日 8時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
###(プロフ) - まいんさん» いえいえ、どの作品も本当に面白くて、私の目は間違ってなかったなと自分を誉めたいぐらいです(笑) 短編集のほうも時々覗いているので気が向けば更新してもらえると嬉しいな〜と思います(..) (2019年7月18日 2時) (レス) id: 643eb217bd (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ###さんいつもありがとうございます(;_;)色々考えながら読んでくださり、ありがとうございます。気になる展開と言ってくださり嬉しいです！ありがとうございます (2019年7月17日 21時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まいん | 作成日時：2019年6月24日 23時
