19 フィクション ページ19
side 桃
「やめてください・・・？」
「ぁ、やめ、・・・ぅ」
「普段言わないことを言うのは、
あのトモダチの影響か？」
顎を捕まれて、言葉は続かへんようになる。
けど、いつもよりずっと抵抗したい気持ちなんは、確かや。
流星。
優しい流星のこと、
今は思い出したく、ない。
強くなりたい。
それまで、待って。
待ってくれる？
──浮かれてなんかいないで、本を読んでおくべきやった。
いつも学校から帰ってきては、予習をする。
逃げるための予習。
こんなときいつも、本の世界はおれを逃がしてくれる。
怪しい稼業に生きる男。
神話の中の神様。
売れない画家。
商人。
武家の男。
とうさんの息づかいも聞こえない、フィクションの世界に逃げ込んだおれには。
その小説の人物に成りきって
目の前の現実から意識を切り離せる。
国が国なら、時代が時代なら、男色は犯罪でおれもとうさんも打ち首だ。
特にイスラム圏では、
、
「っぁ」
遠くに行きたい。
空想の中では、いずれ裁かれる世界に行ける、あと少しの辛抱だと。
自分を慰められる。
「ぃっ、ぁ、っ・・・・」
「もうすぐ、・・・誕生日だな、・・・」
正気とは思えない。
おれの、誕生日？
それが人に馬乗りになりながら、楽しくお喋りできる話題なんか？
この人には。
「誕生日に何がほしい？
何でも言ってごらん」
いつからだったか。
とうさんがおれを抱くようになったのは。
問いに答もせんで顔を覆うおれに、とうさんは分かりやすく、眉をひそめて苛立っとる“ポーズ”を取る。
本当はこの人に、そんな人間らしい感情がありはしない。
「望、お前に、友達なんか、要らないよ」
「・・ん・・やっ・・・」
「とうさんがいるだろ」
「・・・やめ、ろ・・・・」
「・・・・名前は？」
「・・・・は、・ッ・・・・？」
「何て言う？あいつの名前は。」
「・・・っ・・」
死んでも言わへん。
お前なんかに、呼ばせへん。
「・・・・・、ふ・・っ・、」
流星のこと思い出したない、
やって瞼の裏にその笑顔が映った瞬間
こんなヤツの前で。
屈辱でしかない感触が
目尻からシーツに流れた。
「望の涙は、綺麗だ」
綺麗なわけない。
このまま涙に溶けて流れて消えたい。
消えたい、
消えたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 362人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいん(プロフ) - naさん» ありがとうございます。もう忘れ去られてると思ってるので嬉しいです。お時間割いて見ていただいてわざわざコメントまで、本当にありがとうございました。 (2020年5月18日 23時) (
レス) id: 715f3175ec (このIDを非表示/違反報告)
na - はじめまして。このお話が本当に面白くて絶対に完結させてほしいです。 (2020年5月2日 4時) (レス) id: 195cac4769 (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ありがとうごさいます。もう本当にそんな風に言っていただけて身に余る程幸せです。短編集も見ていただいて有り難いとしかいいようがありません。浮かれた勢いで調子乗って更新してしまったので、またお時間あるときにでも良ければ見てやってくださいね。 (2019年7月18日 8時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
###(プロフ) - まいんさん» いえいえ、どの作品も本当に面白くて、私の目は間違ってなかったなと自分を誉めたいぐらいです(笑) 短編集のほうも時々覗いているので気が向けば更新してもらえると嬉しいな〜と思います(..) (2019年7月18日 2時) (レス) id: 643eb217bd (このIDを非表示/違反報告)
まいん(プロフ) - ###さん» ###さんいつもありがとうございます(;_;)色々考えながら読んでくださり、ありがとうございます。気になる展開と言ってくださり嬉しいです！ありがとうございます (2019年7月17日 21時) (レス) id: 16d7e0d9f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まいん | 作成日時：2019年6月24日 23時
