episode6 ページ7
【Aside】
「……A、Aってまだ、チリちゃんのこと好きなん……？」
そう言われた瞬間、私は何かが張り裂けそうな、逃げ出したくなるような、耐えられない心地がした。
冷や汗が流れる。
心臓が痛いくらいに高鳴っている。
(もう………)
いや、まだ駄目だ。
私は重い口を開け、何とか声を絞り出す。
『“まだチリちゃんのこと”って意味がよく分かりませんけど、
私はチリさんも、ネモも、ペパーも、ボタンも、オモダカさんもとても尊敬しているし、皆大好きですよ！』
「そっか〜…
うん、チリちゃんもAのことむっちゃ好きやー！！！」
チリさんは、笑って
強く私の事を抱き締めた。
少しだけ、その華奢な肩が震えているような気がした。
(気の所為、か…)
一瞬揺らいだあの表情から
貴女の求めていた返事や気持ちが全く分からないほど
子供では無くなってしまった。
(貴女が無かったことにするって言ったのに
今更……もう遅い)
『日が暮れちゃいますね、チリさん、少し急ぎましょっか』
「せやなー、
荷物も持ってもらっとるし」
『だからー！それは良いんですって！』
「なはは！」
また荷物を取られると思い、私が両手で持っていた荷物を左手に移すと
チリさんが私の空いている右手を手に取った。
「自分、えらい冷えとるなぁ」
『チリさんの手は、凄く暖かいですね』
「せやろ？さっきまでポケモンで手温めてん」
お互い幸せに笑いあっているのに
何か、心にぽっかりと穴が空いている気がする。
なんで、こうなってしまうんだろう。
何がこんなに阻んでいるのだろう。
立場や、歳の差や、性別の問題は勿論あるけれど、
きっとそれだけじゃない。
根本的な何かを解決しないと、私達は先に進めない。
……この暖かい手を握ったまま、ずっと着かなければいいのに。
そんな馬鹿げた願いも虚しく、あっという間に旅館の前に着くと、特に声をかけることもなくお互いそっと離れた。
「……お、ここやな。こりゃまたえらい立派な佇まいやな」
『ここ、温泉が有名なのと、何より夕餉の懐石料理が凄く美味しいらしくて！はぁ〜楽しみだなぁ……』
「なはは！！ほんま、自分食べるの好きやなぁ！！！」
『ちょ、そんなアオキさんに言うみたいにからかわないで下さいよ！！
あ、18：00に予約したAです！』
旅館に入ると手短にチェックインを済ませ、私達は予約していた部屋へと向かった。
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りこまる - やばい……好き (12月26日 2時) (
レス) @page24 id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - すっっっきぃ… (9月2日 23時) (レス) @page24 id: a311a04bdb (このIDを非表示/違反報告)
あんず - この小説が最近の生き甲斐です！続編楽しみにしてます！お体に気をつけて、更新頑張ってください！！応援してます！！ (2023年2月8日 23時) (レス) @page24 id: 05f7df07a8 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！この話は胸のトキメキや無双系ではなく、意地汚さやもどかしさなどの人間味を重視して書いているのでそう言っていただけて心の底から嬉しいです。是非今後もこの作品をご贔屓にして頂けたら幸いです。 (2023年2月7日 21時) (レス) @page24 id: 2288440125 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 初コメント失礼します。とても綺麗で人間らしい内容と構成で本当に感動しました。これからどう成長し、展開していくか、本当に楽しみです！これからのご活動も心より応援しております。お身体にはお気をつけて楽しんで作品活動続けてくださると嬉しいです！ (2023年2月5日 16時) (レス) @page22 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わらび餅 | 作成日時：2023年1月6日 2時
