episode1 ページ2
【Aside】
チリさんに振られてから10年近く経つ。
そりゃそうだ、あんなガキンチョの頃に告白して、OK貰えるはずがない。
まるで教師に告白する可愛い生徒みたいに、なんの考え無しに感情をぶつけてしまった学生だった頃のあの日。
あの告白の後、チリさんは聞かなかった事にするから今までどうりの関係に戻ろうと言ってくれて、実際に10年そうしてきた。
『そんな私も、もう成人してるんだ…』
親友のネモとは今もポケモンバトルで勝ったり負けたりを繰り返していて、お互い切磋琢磨して強くなっている。
ペパーからは、お前達はバケモノだと言われた。
「あっ、チャンピオンA！わ、私、あ、サインください！！」
「あっ！僕もサイン貰ってもいいですか！」
たまたま通りかかった道で、背が小さい学生二人がこちらを見ていた。
『うん、いいよ』
少し屈んで目線を合わせサインをスラスラと書くと、子供達は嬉しそうな顔をする。
「私！私ね！Aさんとネモさんの昨年の学校最強大会OBのバトルを見てから、ずっとAさんのファンなの！！
あの時はAさん負けちゃったんだけど、でもAさんの冷静で状況によって的確なポケモンを出すところが本当にかっこよくてね！！」
「僕も！！2人の大ファンです！！」
元気ハツラツに話す少女の横で、少し控えめな男の子がコクコクと頷いていた。
『わー！嬉しい！！ありがとう！！
いつか君達がジムリーダーに勝って、四天王にも勝ったら、私達と勝負しようね』
「「うん！！！」」
それじゃ、と手を振って歩き出すと、
見えなくなるくらいまで子供達は手を振り続けてくれた。
____若くて活力に溢れた、小さい学生。
この歳になって、ようやく当時のチリさんの気持ちが分かった。
彼女が言い聞かせるように勘違いだと言っていた意味も。
『それにしても今回の遠征は遠いんだよな……』
スマホロトムをチラッと見て、溜息を着く。
手を繋ぐ。
口付けをして顔真っ赤にして愛を確かめ合う。
確かにそれもあるかもしれない。
でも、子供の恋愛と大人の恋愛は違うのだ。
「その遠征、実は独りじゃないんやで」
『あ！お久しぶりです…チリさん』
今、彼女が私の事をどう思っているのかまでは分からない。
でも、もう子供の頃の私じゃない。
ネモのように純粋な勝負じゃなくて、暗くて、計算高いやり方。
それは決して、ポケモンバトルだけでは無いのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 276人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りこまる - やばい……好き (12月26日 2時) (
レス) @page24 id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - すっっっきぃ… (9月2日 23時) (レス) @page24 id: a311a04bdb (このIDを非表示/違反報告)
あんず - この小説が最近の生き甲斐です！続編楽しみにしてます！お体に気をつけて、更新頑張ってください！！応援してます！！ (2023年2月8日 23時) (レス) @page24 id: 05f7df07a8 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！この話は胸のトキメキや無双系ではなく、意地汚さやもどかしさなどの人間味を重視して書いているのでそう言っていただけて心の底から嬉しいです。是非今後もこの作品をご贔屓にして頂けたら幸いです。 (2023年2月7日 21時) (レス) @page24 id: 2288440125 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 初コメント失礼します。とても綺麗で人間らしい内容と構成で本当に感動しました。これからどう成長し、展開していくか、本当に楽しみです！これからのご活動も心より応援しております。お身体にはお気をつけて楽しんで作品活動続けてくださると嬉しいです！ (2023年2月5日 16時) (レス) @page22 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わらび餅 | 作成日時：2023年1月6日 2時
