08 ページ8
.
『今時、そんな事言う女…っているんだ』
「…いるよ、ここに」
彼が困惑した表情で私を見た。
「だから、私はそんな簡単にあなたに
私の初めてを捧げるつもりはありませんから!」
『…じゃあ、結婚相手だったら捧げるんだよね?』
私の耳元で囁かれたその言葉に、
心臓がドクンと音を立てた。
……って、あーもうダメじゃん。
完全にペース乱されてるし。
ダメダメ…とブンブンと頭を振った私に
彼が、こう言った。
『じゃあ、その初めての相手は俺しかいないよね?』
…なにが?
どうしてそういう発想になるの?
『初めてのキスも俺だったんなら、
全部俺でいいじゃん!』
「…私は……」
『…ん?』
「ほんの少し前に会っただけの人と、結婚なんて絶対にしないから!」
……言ってやった。
うん。はっきりと言ってやった。
これでいい。これでいいんだよ。
だって、いくら格好よくてもこの人のことを
私は知らないし
翔ちゃんと呼ばれるこの人とは
さっき知り合ったばっかりで
いきなり結婚なんて無理に決まってる。
『おーい、爺』
彼が呼ぶと、
さっきのおじいさんが戻って来た。
だいたいこの人だって、
本気で言ったんじゃないはず。
だって、私だよ?
私と結婚したいなんて思うわけがない。
一目惚れ……なんて、
この人に限ってない気がするし…。
私を見下ろす彼の顔が頬笑むと
おじいさんに向かって言った
『爺、準備に取り掛かれ』
「あ、翔ちゃんのベッドのシーツは取り変えたよ?」
『ちげーよ、結婚式の準備だよ』
「結婚〜!?翔ちゃんが結婚するって言った〜!」
大きな声で、そう叫ぶと同時に
おじいさんはすごい勢いで
部屋を飛び出して行った。
.
662人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミイ | 作成日時:2015年1月21日 21時