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疲労困憊の体で考えた。魔法は隠さない方向にしよう。理由は簡単。私の特技がこれしかないからだ。
私の場合、魔法に頼らないとこの試験ではやっていけない。この世界で私だけ魔法が使えるというのは一種のアドバンテージである。これを使わずしてどうする。宝の持ち腐れだ。
結論、私は私の持てるすべてを使ってこの試験に合格する。そこで失敗したらそれまでだ。
私は並走するクラピカさんに声をかける。先ほどの疑問を解消しますね、と。
「……いいのか？」
「はい。私も覚悟ができました。というか、これを隠しながらでは私は戦えない。だから早めに出せるものは出そうと思って」
バラしたところでそれを完璧に扱えるわけではないし、バレて困るというものでもない。だから本当に一種の特技、個性として出していこう。
あと、体力がもうつらい。
ブレザーから杖を取り出して、ちょうど足元に転がっていた木の枝に先を向ける。ほうきくらいの大きさの枝が落ちていればそれが一番良いのだけれど、都合よく落ちているわけもなく。仕方がないから魔法で大きくしよう。
「『大きくなって』！」
「！」
クラピカさんの目が見開かれるのがわかった。もっと言えば、その近くにいた人達の視線が私に集まる。その中にはレオリオさん、前方を走るゴンくん、そしてキルアくんのものもあった。
……大きくなりすぎた。丸太並みになった枝に座る。ベンチに座る気分だ。私は枝に魔法をかける。
「『飛べ』！」
ふわりと離れる地面と足。そして滑るように前へ進む。その様子に辺りがどよめきだす。でも個人的には元の世界で非魔法使いが開発した自動車の方がすごいと思う。
自動車はガソリンというのをエネルギーにして動いているとのこと。それに対して私たちは魔力をエネルギーにしてほうきを動かすのだ。要は、この場合において魔力はガソリン。動力源なのだ。
「はあー楽チン」
体力を消費し続けるよりはずっとマシ。
「な、なんだそれは……」
全員の意見を汲むように、クラピカさんが私に問いかける。私はそれにすっきりとした気持ちで答えた。
「魔法です。私、魔法使いなんです」
「……？」
わけがわからないい、というような顔を向けられても、私はそれしか言えないのです。
「それではお先に」
ひょいと片手を上げて湿原を滑る。ヒソカさんとその集団を追い抜いて、あっという間にゴンくんとキルアくんの横に並んで先頭集団の仲間入りをした。
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作者名：敷 | 作成日時：2019年8月22日 21時
