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レオside
『……〜♪』
会議室を出て、ぐちゃぐちゃと歩き回る。
何も考えたくなかったんだ。
だっておれ…分かんないんだもん。
Aが死んだことも、もう15年も経つのに受け入れられなかった。
みんなの前では、"亡き王の親友"として振舞ってきたけど、本当は…
本当は、認めたくなかった。
Aが死んだなんて、1ミリも認めたくなかったんだ。
だから…
レオ「なあ」
『…あっ…』
濡れ羽色の髪が振り返って、慌てたみたいにベンチから立ち上がる。
不安げにおれを見つめる瞳に、ふと
『ご、ごめんなさい!邪魔ですよね…今すぐ退きますか___』
レオ「おまえ、今いくつ?」
そいつが座ってたベンチに腰を下ろして、そう問いかける。
困ったみたいに首を傾げたそいつは、おれの目を見た。
…綺麗な蒼色だな。
『え…っと、今15です』
レオ「15か〜…おれの30近く下なんだな〜」
ここ座れよ、と隣をぽんぽんと叩けば、また困ったみたいに眉を寄せて、恐る恐る隣に座った。
…まあ、1人分の間はあるんだけど!
レオ「おまえ、なんでアイドルになったんだ?」
『…えっ、どうして俺がアイドルだって知って…』
レオ「そりゃ、あの場にいるならアイドルだろ〜?"ESの王の為の法事"には、ES所属のアイドルだけが出席できるからな」
あ、そっか、なんてそいつが呟く。
…似てるな〜
ちょっと抜けてるとこも、困った時に眉を寄せて頬をかくのも。
……薄ら寒いくらいに、そっくりだ。
レオ「それで?」
『…いえ、ESビッグ3であるKnightsの月永さんにお聞かせする程のことじゃ…』
レオ「そのおれが良いって言ってるだろ〜!はやくはやく〜!」
また困ったみたいに頬をかいて、そいつが俯く。
『…その、俺…何か明確な理由があってアイドルになった訳じゃないんです』
レオ「明確な理由?例えば?」
『…例えば、誰かの背中を追って…とか、どこかから抜け出したいから…とか、輝きたいから…とか、そんなんじゃなくて』
そいつが、まっすぐ前を向いた。
その目が…いつかの"王"と重なる。
胸が、嫌な音をたてた。
『ただ漠然と。…ただ漠然と"アイドルにならなきゃ"ってそう思って……その思いだけで、ここまで来ちゃいました』
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GurauGa(プロフ) - 最高に最高して最高でした。あの一気に前作から見たんですけどここまで完成されている心が打たれる作品に合うのがもう久しぶりすぎて涙が止まりません(➰〰➰)ノ王の安らかなる眠りを願います。 (2022年11月27日 2時) (レス) @page34 id: 1e7013ed24 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 伊弉冉アリスさぶさん» ご愛読頂きましてありがとうございました!少しでも王の気持ちを知っていただけたのならば嬉しいです♪ (2021年11月3日 20時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - るるるーさん» ご愛読頂きましてありがとうございました!アンケもありがとうございます! (2021年11月3日 20時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
伊弉冉アリスさぶ - 連続すみませんorz面白かったです!王になんてなりたくなかったのところで、偶像崇拝の瑞沢くんの最後を思い出し、本当の気持ちを抑えてでも皆の王でいたい、という気持ちが伝わり、それに気づいた時には鳥肌が立っていました…素晴らしい作品をありがとうございました (2021年11月1日 2時) (レス) @page29 id: c2abd4fe86 (このIDを非表示/違反報告)
伊弉冉アリスさぶ - 完結おめでとうございます〜!この作品が出来てから、『偶像祟拝をもう一度読まなければ……!』となり、夜遅いにもかかわらず1から最後まで読んでしまいましたw (2021年11月1日 1時) (レス) @page34 id: c2abd4fe86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魚 | 作成日時:2021年10月19日 12時