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Aside
待ちに待った春。
1ヶ月前に思いを馳せたあの日にはまだ硬かった桜の蕾も、もうふっくりとしている。
というか、なんなら咲いた。
まだ五分咲き…ってところだけど。
でも咲いた事には変わりなくて。
桜の花言葉って何だっけ……えっと確か……精神美、優美な女性、純潔……だったかな？
日本の国花だもんね、桜。
精神美っていう花言葉が似合ってる。
…と、まあ今度は桜に思いを馳せているわけなんだけど。
何を隠そう今日は夢ノ咲学院と玲明・秀越の卒業式。
いつもなら自由登校で暇なんだよね〜なんていいながらお見舞いに来てくれる同級生達も、今日ばかりはこの病室にいない。
ぽつん、と俺1人。
正直言って寂しい。
卒業式に行ってもいいですか？って主治医に聞いたら、Aさんは泣くので駄目ですって言われました。
……理由よ…
まぁ、今の状態だったら泣いて心臓動かすのも危ないからしょうがないんだけどさ。
それで倒れて運ばれて〜ってしてるうちに死んだら笑えない。
くそ……学院がここまで移動してくればいいのに…！
いいなぁ…卒業式……
だってさ、高校の卒業式なんて人生に1回しかないんだよ？
天祥院くんですら出席してるのに……ちくせう…
けっ…どうせ俺は独り寂しく死んでいくんだ……
思わず歪んだ視界を誤魔化すように、ベッドの上で体育座りをする。
すんっと鼻を鳴らせば、消毒液の匂いが流れてきた。
そのままうとうとと微睡んでいたら、バンッと音を立てて扉が開いた。
『ほぇ………？』
思わず変な声が出たが、そんな事を気にしてられない。
だって我先にと入ってきたのは…………
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作者名：魚
| 作成日時：2020年11月25日 12時
