総統閣下と氷の女【gr】 (ページ16)

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エーミールの村には、その日の夕刻ついた。

とりあえず今日は寝ようということになったんだが、如何せんAの冷気で冷える。

薪を起こしてもすぐに消えてしまうので没。

Aをコートで包んでいてこれなのだから、きっとコートがなければ俺らは今頃凍死だな。

…笑い事じゃないが。

翌朝から儀式は始まった。

祠に向かって頭を垂れ、5回あの文言を唱える。

その後にエーミールが踊り出した。

足先でリズムをとって、指先で冷えた祠の空気を撫でながら踊る。

くるくるとまわりながら踊るエーミールは、まるで蝶が舞っているようで、驚くほど綺麗だった。

em「氷は雪に変わりて我ら潤す水になるニュニホプラントは水の大精霊なり」

そう口ずさみながらくるくると踊ること三日三晩。

4日目の朝がきた。

目を覚ますと、まだAもエーミールも寝ていて、もう一眠りしようかと微睡む。

けれど、ふと目に入ったAの腕に目が覚めた。

ガタッと大きな音を立ててしまったらしく、2人も起きた。

「「『消えてる…』」」

Aの腕が、氷では無くなっていた。

『き、消えてるよグルッペン！ありがとうエーミール！』

嬉しそうにエーミールに抱きつきに行ったAを瞬速で回収する。

外に出てみると、深く深く雪が積もっていた。

それが陽の光に晒されて溶けている。

雪解け水は、流れ流れて我々国の川になっていく。
そうか…

em「これが……ニュニホプラントの加護」

儀式を行うことでニュニホプラントの加護が現れ、雪が積もって水になる。

あの氷の右手は、加護が固まったものなのだろうな。

gr「帰ろう。トン氏が怒ってる」

嫌そうな顔をしてAの方に左手を差し出すと、右手で握ってきた。

エーミールが後ろでくすくす笑っている。

俺らを照らす太陽の光は、雪に反射してきらきらと祠に満ちた。