悪役 ページ7
ヒヨリ視点
昔はおとぎ話に出てくる悪役の意図が分からなかった。
なんで声を奪っちゃうの?
なんで毒林檎なんか食べさせるの?
って。
でも今はなんとなく分かる。
恋は世界が輝いて見えるなんて、そんな大層なものではない。
煮込めば煮込むほど、腐っていくみたいに憎しみが増えていく。
そして、そんな俺がいやになる。
「ヒヨリ?おい、ヒヨリッ!!!」
「うわッ!なに!?!?!」
「なにじゃねーよ、呼んでも返事しなかったのはお前だろ。」
呆れたようにそう言う。
さっきまで帰り支度を忙しそうにしていたクラスメイトはいつのまにかいなくなっていた。
目の前にはアンジだけ。
「帰るぞ。」
腕をぐいっと引っ張られる。
なんで、アンジは、俺のことなんか……
アンジはアイヅのことが好きなはずなのに。
アイヅと先に一緒に帰ってしまえばよかったじゃないか。
「え、待って、アイヅは?」
俺が聞くと、顔をこちらに向けずに吐き捨てるように言った。
「もう帰ったよ、残念。」
残念って……
それはやっぱり、アンジはアイヅと一緒に帰りたかったってことなのか。
アンジから出される言葉の一つ一つが、俺の心を沈ませていく。
「そっか。」
そのせいか、俺の声はかすれていて、喉から上手く出すことができなかった。
「なあ、ヒヨリ。」
アンジの声に肩がビクッと震える。
今度こそ、声を出すことができなかった。
アンジがこちらを向き、俺の目をじっと見つめる。
空気が冷えていた。
「悪役にもキスシーンくらいほしいよな。」
直後に、唇にじわっとあたたかい感触があった。
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はいどれんじあ(プロフ) - 瑠璃-るり-さん» ありがとうございます。頑張ってネタ探してきますw (2022年11月18日 20時) (レス) id: 428a11731d (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃-るり-(プロフ) - え…、あ、、最高だぁッ…、お気に入り&評価失礼しますッ (2022年11月18日 7時) (レス) @page2 id: dd974ea994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はいどれんじあ | 作成日時:2022年11月17日 19時