紫陽花による薔薇短編集。【BL】

出張 ページ4

ヒヨリ視点
「ヒヨリ、俺、来週の火曜から金曜まで出張だから。」

アンジがスマホを触りながらそう言う。
俺はお皿を洗う手を止めた。

「さ、最近多くない？」

アンジがチラッとこっちを見る。

「そう？」

え、無自覚？

「そーだろ、明らかに頻度高くなってるし……」

何でそんなに出張引き受けるんだよ。
俺と会えなくなるの、別にどーでもいいのかよ。
そんなことを頭の中でぐるぐる考える。

やば、俺めんどくさいやつじゃん……

「もしかして、俺のこと疑ってる？」

アンジがこてっと首を傾げた。

「う、疑ってるとかそんなんじゃなくて。」


アンジが俺の方へやってくる。
俺の目の前に立つと、俺の目をじっと見つめてきた。
思わず目を逸らしてしまう。

「こっち見ろ。」

俺の顔を両手でつかんで、無理やり上を向かされる。

「な、何……」


「お前、アホか。」


アンジにそう言われ、一瞬頭にきた。
少なくともアンジにそんななこと言われる筋合いはない。

「……は？」

でもアンジは意外と真剣な顔つきをしていた。




「俺がお前のこと好きじゃなくなるわけねーだろ。」



息が止まる。

心臓がバクバクする。


「……お前の方がアホだよッ。」

俺はそうつぶやいた。


なんで、そーいうことさらっと言っちゃうかな……


赤くなった顔を見せないようにするため、俺は顔をそらした。

その時のアンジの顔なんて、知らない。

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