カタツバキの花を君に *Kei.I* (ページ33)

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彼女は嬉しそうに大ちゃんの元へと駆け寄った。
その反応に彼も満足そうに微笑む。

「なんで二人一緒なの？」

その言葉はまるで、俺のを取るな。そんなふうにも聞こえた。
少し機嫌の悪い時の声だけど顔は笑っている何も気づいてない彼女は楽しそうに伊野尾くんと説明受けた大学一緒だったの！と報告している。

「Aってあそこの大学行きたかったの？
初耳なんですけど。」

俺に言えよー。なんてAちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。

胸の中の真っ黒な気持ちが渦めく。

心臓が掴まれたみたいに痛い。

本当はわかってるくせに、言葉に出せず

自分の中で認めることも出来ない。

あぁ、俺は本当に弱虫だ。

「…おくん、伊野尾くん！」

ぼーっと考え込んでいたら、Aちゃんに肩を揺すられてはっとする。

「ごめん、」

「どうしたの？体調悪い？」

「伊野ちゃんどした？」

子犬みたいなくりくりの目が俺を見る。

2人そっくりじゃないか。

「…ううん、なんでもない。」

「そう？なんかあったらすぐ言ってね」

心配そうに俺の背中をさすってくれるAちゃん。

そんなことばかりされたら_________。

「おら、いくぞー。」

「あいたっ！もー。伊野尾くんも行こ！」

「…うん。」

俺の背中をさすってくれていた手を大ちゃんがデコピンして外す。

先に歩き出した大ちゃんの背中を追いかけていく少し弱っちい背中。

_______この気持ちにはふたをすべきなんだ。