カタツバキの花を君に *Kei.I* (ページ32)

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夢がない、そういった彼女の目はすごく寂しそうだった。
女慣れしてるはずの俺でもなんて声掛けたらいいかわからず素っ気ない返事になってしまう。

あーーなんでこんな調子狂うんだろ。

「伊野尾くんは理工学部のとこ見てたよね…？」

会話が止まってしまい戸惑っていると彼女の方から話を続けてくれた。

まさか、見られてたなんて思わなくて思わずえって言っちゃったけど。

「建築士…興味あるんだ。家とか建造物とか見るの好きで」

俺の答えを聞いて何故か少しだけ安心したような表情をしたあと、有名な建築物や世界文化遺産になっている建物の名前などを数々上げてくれた。

頭良いのかな。

話が弾んでそのまま一緒に教室に帰る流れになった。
嬉しい。素直にそう思った。

「Aちゃんいろんな建物の名前知ってるんだね」

「うん、歴史とか好きで…。」

女の子なのに変だよねーなんて笑う。

「そんなことないよ。こんなに話せたの嬉しいし。」

「ほんと？よかったぁ」

ちょうど教室に続く階段を登り始めた時だった。

「…伊野ちゃん、A」

後ろから声をかけられ2人で同時に振り向く。

「だいちゃん！」

「大ちゃん…」

少し悲しそうな怒ったような顔をした大ちゃんがそこにいた。