自.傷.少.女【歌い手】

8:ピアノ ページ9

．

今回の曲はあれ使おうかな…。

いつもなら電子音だけで、楽器は全くと言ってほど使わない。
だってめんどくさいじゃないか。

部屋の隅っこでただずんでる、ピアノに被せた布をとる。

久しぶりすぎて、弾き方忘れてそうだな。

鍵盤をゆっくり弾いてみれば、ピアノの綺麗な音が出る。

−ひ…て……！−

−な…さ！あわ……よ…！−

その音を聞くと、既に終わったことを思い出される。

そのあともすこし音を確認し、さっき作った歌詞に合うように弾いてみる。


昔っから、この音は大好きなんだよな。

ゆっくりした速さで、低い音や高い音。

音を重ねていけばいくほど、静かな部屋に音は響く。


『何も知らないふりして溶けてく雪はきっとこんな僕なんて知りはしない♪
こんな雪のように♪僕の悩みは溶けてはくれないんだね?

いっそ雪のように溶けてしまおうかなんて、怖がっちゃって出来はしない。』

音に合わせて、さっき作ってみた歌詞に合わせてみる。

もっと工夫した方がいいかな。
口ずさみながら、引いてるピアノは

なんとなく、昔を思い出させてくれる。

思い出したくないものがほとんどだが。
こんな私にだって、いい思い出の一つや二つはある。

椅子から降り、ピアノを閉じる。

嫌だなぁ、泣きたいわけじゃないのにさ。

なんで、思い出すたびこうなっちゃうんだろう。


もう無理だって自分でもわかってるのに、


『……なんでここまで過去にすがってんだろうなぁ。』


生きる理由がないからか、

まだ、忘れたくないだけなのか。

そんなの、誰にだってわかんない。

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