歌物語［化］ わたるマイマイ 其の弐

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「私が訊きたかったのは＿＿この子を、浦田くんを、お母さんのところに一体どうやったら連れて行ってあげれるかって＿＿それだけだったでしょうが。最初から、それだけだったでしょうが。そんな、知ったところで誰にも自慢できないような薀蓄なんて、知らないんだよ。使いどころのない雑学なんて＿＿脳の無駄遣いだ。大事なのは＿＿そういうことじゃないでしょう」


阿良々木Aのことじゃない。

あくまで、浦田渉のことだった。

私が離れればいいだなんて＿＿違う。


私は離れては、いけないのだ。


「……わかっているのかな、Aちゃん。その子＿＿そこにはいないんだよ。そこにはいないし、どこにもいないの。浦田くん……浦田渉くんっていうんだっけ。その子は……もう死んでるの。だから、もう、当たり前じゃなくて＿＿その子は怪異に取り憑かれているんじゃなくて、怪異そのもので＿＿」

「それがどうした！」


怒鳴った。

相川を相手に＿＿怒鳴ってしまった。


「当たり前じゃないなんて、そんなの、みんなそうでしょうが！」

「…………」


私もお前も＿＿天宮も。

永遠に続くものなんて＿＿ないんだ。

それでも。


「あ＿＿阿良々木、痛いぞ」


浦田くんが、私の腕の中で、頼りなげに、もがく。思わず、強く握り締め過ぎて、肩に食い込んだ爪が、痛いらしい。

痛いらしい。

そして言う。


「あ、あの＿＿阿良々木。こいつの、相川の、言う通りだ。おれ＿＿おれは」

「黙ってて！」


何を喋っても＿＿その声は相川には届かない。

私にしか届かない。

けれど、その私にしか聞こえない声で＿＿この子は最初から、この子からも最初から、自分から蝸牛なのだと、そう正直に＿＿告げていた。

精一杯、出来る限り、告げていた。

そして、また＿＿言っていた。

最初の最初、一言目に。


「お前には聞こえなかったんだよね、相川＿＿じゃあ、私が言ってあげるよ。この子は＿＿私に対しても、天宮に対しても、一言目からいきなり、とんでもないこと吐かしやがったんだ＿＿」


話しかけんな。

お前のことが嫌いだ。


「わかる？ 相川。ついてきて欲しくないからって＿＿遭う人間全員に、そんな台詞を言わなくちゃいけない子の気持ちがお前にわかるっての？ 頭を撫でられそうになったら、その手に噛みつかなくちゃいけない子の気持ちなんて＿＿私には全くわからないよ」

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