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とういうより、浦田くんには、そんな発想自体がなかったらしい__家族というものはいつまでも、一緒にいるのが当たり前だとばかり、思い込んでいたから。そもそも離婚なんて制度があること自体、知らなかったのだろう。
知らなかったのだろう。
お父さんとお母さんとが、別れ別れになるなんて。
「でも、当たり前っていうなら、そっちの方が当たり前なんだよな。人間なんだから、口論もすれば喧嘩もする。噛みついたり、噛みつかれたり、好きになったり、嫌いになったり、そんなこと、当たり前なんだよな。だから__好きなものを好きでい続けるために、本当はもっと、頑張らなきゃいけなかったんだよな」
「好きなものを好きでい続けるために、頑張る__って、なんか、不純とは言わないけれど、あんまり純粋な感じがしないけれどね。頑張って好きになるなんて__なんか、努力してるみたいな感じじゃないの」
「でも、阿良々木」
浦田くんは少しも譲らずに、言った。
「おれ達が持つ好きっていう感情は、本来、すごく積極的なものじゃねえか」
「……そうだよね」
確かに。
頑張って、努力するべき__なのかもしれない。
「好きなものに飽きたり、好きなものを嫌いになったりするのって__つらいじゃねえか。つまらねえじゃねえか。普通なら、十、嫌いになるだけのところを、十、好きだった分、二十、嫌いになったみたいな気分になるじゃねえか。そういうのは__凹むぜ」
「きみは」
私は、浦田くんに訊く。
「お母さんのことが、好きなんだね」
「ああ、好きだ。勿論、お父さんも好きだ。お父さんの気持ちだってわかるし、決して、望んでそういう結果になったわけじゃないことも、わかってる。お父さん、色々とあって、大変だったんだ。ただでさえ、一家の大黒天だったのに」
「きみのお父さんは七福神のメンバーなのか……」
父は偉大だった。
そりゃ色々とあって、大変なはずである。
「お父さんとお母さんが喧嘩をして、その結果、別れちまったけど__おれは二人とものことを、大好きなんだ」
「ふうん……そっか」
「だから、だからこそ、不安だ」
本当に不安そうに__俯く浦田くん。
「お父さん、お母さんのこと本気で嫌いになっちまったみたいで__おれをお母さんに会わそうとしねえんだ。電話もかけさせてくれねえし、もう二度と、会っちゃいけないって言われた」
「………………」
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灰猫(プロフ) - 紅茶さん» 紅茶さんコメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ありません(><) Twitterですが、アカウントを作り次第わたるマイマイ其の参の方にリンクを貼らせて貰いますのでもう少々お待ちくださいませ!! (2020年4月28日 0時) (レス) id: cd0e1b19a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - Twitter教えていただきたいです!都合上いいねとフォローしかできませんがそれで良ければお願いします! (2020年4月4日 19時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - しのみやさん» しのみやさんコメントありがとうございます!これからも是非楽しく読んでやって下さい(*^ ^*) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや - 化物語も歌い手さんも好きなのでとても楽しく見させてもらってます! (2020年3月31日 18時) (レス) id: 5d97f4e4ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月29日 14時