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__今のところ、この町には興味があってね。
なんて、そんなことを言っていた。
だから、いついなくなっても不思議じゃない、どうしようもない筋金入りの根無し草ではあるが、相川のことで前の月曜__それからその後始末としての火曜日にあったばかりなので、そして私は昨日、歌詞さんと会っているので、さすがにまだ、あの廃ビルにいるはずである。
となると、問題は連絡手段だった。
彼は携帯電話を持っていない。
直接会いに行くしかないのだった。
まあ相川は、歌詞さんとは先週知り合ったところで、付き合いと言えるほどの付き合いではないわけだし、ここは対歌詞さんに関しては一日の長がある私が行くのが妥当かなと思ったけれど、相川の方から、「僕が行くよ」という、申し出があった。
「マウンテンバイク、貸してくれる」
「いや、それはいいけれど……場所、わかるの? なんなら、地図でも書くけれど__」
「Aちゃんのお粗末な記憶力と同じレベルで心配してもらっても、僕は嬉しくもなんともないよ。むしろ悲しくなってくるくらいだもの」
「……そうですか」
私が悲しくなってきた。
結構真面目に。
「実を言うと、僕、駐輪場で最初に見かけたときから、このマウンテンバイクに乗ってみたいと思っていたの」
「最高だと言ってたのは、本音だったんだ……そんなことないと思ってたけど、お前結構、素直じゃない奴なんだね」
「ていうか」
相川は言った。
私の耳元で、囁くように。
「その子と二人きりになんてしないで」
「………………」
「どうしていいか、わからないの」
まあ、それはそうだった。
浦田くんにしてみても、そうだろう。
私はマウンテンバイクのキーを、相川に手渡した。確か、前に聞いた話では、相川は自転車を持っていないはずだから、そんな奴に大事な愛車を貸すだなんて、考えてみれば危なっかしい話ではあるが__まあ、相川なら別にいいか、という感じだった。
で。
現在、相川からの連絡待ち。
浪白公園のベンチに、私は戻ってきていた。
隣には、浦田渉。
一人分の距離をあけて、座っている。
いつでも逃げ出せる、というか。
今にも逃げ出しそうな位置だった。
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灰猫(プロフ) - 紅茶さん» 紅茶さんコメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ありません(><) Twitterですが、アカウントを作り次第わたるマイマイ其の参の方にリンクを貼らせて貰いますのでもう少々お待ちくださいませ!! (2020年4月28日 0時) (レス) id: cd0e1b19a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - Twitter教えていただきたいです!都合上いいねとフォローしかできませんがそれで良ければお願いします! (2020年4月4日 19時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - しのみやさん» しのみやさんコメントありがとうございます!これからも是非楽しく読んでやって下さい(*^ ^*) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや - 化物語も歌い手さんも好きなのでとても楽しく見させてもらってます! (2020年3月31日 18時) (レス) id: 5d97f4e4ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月29日 14時