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「今日は単なる慣らしのつもりだったけれど、この服、できれば一番最初に、Aさんに見て欲しかったから」
「………ふうん?」
「問題が解決したことによって、ファッションを自由に選べるようになったから、ね。これからは色んな服が、どんな服でも、制限なく着られるようになったんだよ」
「ああ……そうだっけ」
自由に服が選べない。
これも、相川が抱えていた問題の一つ。
お洒落をしたい年頃だというのに、だ。
「一番最初に私に見せたかったっていうのは、まあ、なんっつーか、冥利に尽きるというか、光栄な話だね」
「見せたかった、じゃないよ、Aさん。見て欲しかったんだよ。それとこれとじゃ、ニュアンスが全然違うじゃない」
「へぇ……」
というか、月曜日、『大人しめの服』の他にも、もっとすごい恰好も見せてもらっているのだが……。
けれど、しかし、やけに胸元が強調されたその服は、確かに、かなり、私の眼をきつく惹きつけるだけの魅力を備えていた。
いいセンスをしていると言うか、まるで強力な磁石のようで、捕らえられたような気分だった。病弱という触れ込みだった彼だが、そんな言葉とはまるで対極的な、前向きのベクトルを、感じなくもない。そんな露出は多くない……というより、五月半ばというこの時期を考えたら、長袖とロングスキニーを穿いている彼の露出は、むしろ少ないくらいなのに、とにかく、エキゾチックだ。なんだろう、一体どういうことだろう。
ひょっとして、月曜日における相川真冬の一件、それに、ゴールデンウィークにおける委員長、天宮翔太との一件を経験することによって、私は、裸や下着姿よりも、男性の着衣の方に、より欲を感じる能力を身につけてしまったのだろうか……。
嫌だ……。
高校生の段階で、そんな能力は必要ない……。
ていうか冷静になってみれば、クラスメイトの男の子のことをそういう眼で見るのは単純に失礼だと思う。激しく自分に恥じ入る感じだった。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時