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「けど、いきなり困ってるとか言われてもな」
「確かにそうかもしれないね。Aちゃん、今日は寝癖、ついてないもの」
「私の悩みは精々寝癖くらいだという意味かな!?」
「深読みはしないでよ。意外と被害妄想が強いねえ。Aちゃん、行間紙背を読み過ぎだよ?」
「他にどんな解釈があるんだよ……」
ったく。
花びらまで棘でできている薔薇みたいな奴だ。
「誰にでも優しいクラスのあの子が自分にだけは冷たいとか、そういう悩みでも力になれると思うの」
「嫌な話だな!」
何か、無理矢理にでも話さない限り、延々と永遠にこの展開が続きそうだった。
やれやれ……。
本当にもう。
「そうだな……困っていることねえ。敢えて言うなら、それは、困っていることってわけじゃないのかもしれないけれど」
「あれ。何かあるの」
「そりゃ、一つくらいはね」
「何かな。聞かせて」
「迷いがないね」
「そりゃそうだよ。僕が蒼音ちゃんにお返しできるかどうかの瀬戸際だもの。それとも、人には話しにくいことかな?」
「いや、そういうわけでもないけど」
「だったら話してみてよ。話すだけでも楽になれるもの__らしいよ」
…………。
かなりレベルの高い秘密主義者だったお前が言っても、あんまり説得力ないなあ、それ。
「えっと……弟と喧嘩した」
「……いまいち力になれそうもない話だね」
諦めの早い男だった。
まださわりを聞いただけじゃん……。
「でも、一応、最後まで聞かせて」
「一応かよ……」
「じゃあ、とりあえず、最後まで聞かせて」
「同じようなもんでしょ」
「とりあえずといってもとるものもとりあえずだよ」
「……。あー、まー、なあ」
さっき、自分で禁句と決めた言葉だけれど。
この展開じゃ、仕方ないか。
「ほら、今日って、母の日じゃん」
「ん? ああ、そう言えばそうだったね」
相川は普通に相槌を打った。
やはり、気の遣い過ぎだったか。
となるとあとは__私の問題だ。
「で。どちらの弟さんと喧嘩したの? 確かAちゃん、二人、弟さん、いたはずだよね」
「ああ、知ってるんだっけ。どちらかっていうと上の方__だけど、まあ、両方みたいなもんだよ。あいつら、何をするにもいつでもどこでも5W1H、完全にべったりとつるんでるからね」
「栂の木二中のファイヤーブラザーズだものね」
「通り名まで知ってんのか……」
なんかやだなあ。
弟に通り名がある方が嫌だけれど。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時