9話目 ページ11
Aは、トイレの個室で一人嘔吐いていた。
『っう゛ぇ……!ぉえ゛ぇぇぇっ!……』
Aの口から吐瀉物が流れ出る。
胃の中はとっくに空っぽで、胃液しか出てこないのだが、
それでも吐き気が収まることはなかった。
『はぁ……はぁあ、っ……』
Aは口元を手で拭い、個室へと戻って行く。
Aがドアを開けると、そこには椅子に腰掛けてス魔ホを弄っているダリの姿があった。
ダリ「……お!おかえり〜」
『………同期…』
ダリ「ん〜?」
『……頭、痛い……』
そんなAの呟きを聞いて、ダリはス魔ホの画面を暗くしポケットに仕舞い込んだ。
ダリ「あー……やっぱ飲み過ぎだよ〜ほら、水飲んで」
ダリはそう言って店員を呼び出すと水を注文し、そのついでに灰皿を持って来てもらうようお願いをする。
ダリがそうしている間にも、Aは頭をゆらゆらと揺らしてテーブルに突っ伏していた。
ダリ「はい、これ飲んで」
ダリはそう言うと、テーブルに突っ伏しているAの肩を揺する。
『……』
そんなダリの動きに反応したのか、Aはゆっくりと体を起こした。
と思えばダリの襟元を掴んで引き寄せ、お互いの鼻が触れ合う程の距離まで顔を近づける。
ダリ「……っ、」
突然の事に、ダリの心臓は大きく跳ねた。
Aはそんな反応もお構い無しに、そのまま目の前の胸板に頭を預けた。
『ん………同期ぃ…』
ダリ「……何、誘ってるの…?」
ダリは少し眼を開きながらAの頭を撫でた。
『……頭痛が、酷いんだ』
Aは、ダリの胸板に頭を預けたままボソリと呟く。
『……だから、もう少しだけ……』
そう言いながら、Aはもう一度頭をダリの胸に沈めた。
そんなAの行動を見て、ダリはその小さな体を包み込むように抱きしめた。
『……ありがとう……』
Aが小さくそう漏らすと、それに応えるようにゆっくりとした動作で頭を撫で始める。
そうすると、一分も経たない内にAから規則正しい寝息が聞こえてきた。
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作成日時:2023年12月13日 7時