白い翼の愛の天使【ハリポタ】 (ページ1)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:6,889 hit

1 不穏な夜ページ1

・

雲行きの怪しい仕事帰りの夜。

たまに緑色をした奇妙な音のない雷が灰色の雲のなかを駆け巡る様を家への道を早歩きで進みながらも、好奇心を押さえられずちらちらと雲を見る。

横断歩道に近付くと目線を空から前方に戻し、信号を確認する。
今朝のニュースで横断歩道で事故があったという情報が流れてきたからだろう。いつも信号を確認してはいるが、そのようなニュースを見るといつも以上に慎重になる。

＿＿＿＿信号のいろは赤

本来の私なら朝に交通事故のニュースを見た日は、横断歩道を渡る際に絶対に余所見なんかしない。

でも、今日はニュースを見たにも関わらず、再び空を見上げた。
他の人は雲行きが怪しく、雨に降られたくないのか自分の時計ばかり気にして空を見ようとしない。緑色の音のない雷なのだから、雨なんか気にしないで騒いだり、写真を撮っていてもおかしくないと思うのだが。

私しか見えていないのだろうか。

だとしたら重症だ。花屋の仕事は力仕事もあるが、好きな仕事なので苦に感じていない。よくある仕事からのストレスではないだろう。

お酒も飲んでないしなぁ

そんなことを思いながら空を見つめていた私の目は一瞬、流れる雲と雲の間にあるものを捉えた。

『ほ、菷……と…あれ、もう見えなくなっちゃった』

私は菷が見えなくなったあとも立ち止まって空を見続けた。

…ほうき、菷だったよね。
まだ若いので目が可笑しくなったとも考えられないし、この間健康診断したし病気でもないはずだ。

＿＿＿＿トンっ

私が見たものを信じられなくて目を少し擦っていると、人とぶつかってしまった。ハッとして空から視線を前方に移すと信号の色は青に変わっていた。

私は空に気を取られて青信号になっても前に進まず、立って通行の邪魔をしてしまっていたのだ。そりゃあ、ぶつかってしまうに決まっている。
そう思うと申し訳なくなった。

『ごめんなさい、少しぼーっとしてしまって…』

「いえいえ、こちらこそぶつかってしまって申し訳ありません。お気になさらなさらないでください」

私がぶつかってしまった人に軽くお辞儀して謝るとその人は、私が気にしないようにか柔らかい口調でそう告げて会釈して去っていった。

先程まで見た光景に気を取られていた私だか、現実に引き戻され、同じ失敗をしないように足を進めた。

＿＿＿＿＿＿＿＿

住宅街に入るとすぐ私の家が目にはいる。
私の愛しの家だもの。