鎖を解いて、その手を伸ばして

26＊カラフル ページ26

　休日のショッピングモールには、色が溢(あふ)れている。
　行き交う人々の服、商品の数々。
　何もショッピングモールに限ったことではないけれど。


　此処と璃愛の家は近いから、わりとよく来る、って聞いたことがある。
　でも私の家ではほぼ目の前にあるスーパーで買い物を済ませてしまうから、ここのショッピングモールにはあまり来ない。
　利用するのは本とCDを買うときぐらいだ。
　それもあんまり頻繁にではないし。


　だからかな、此処の彩りが新鮮に思える。
　一口にショッピングモールといっても、彩りはそれぞれ違うから。


「ここらへんだよね、あの本の売り場」
「うん、変わってなければね」


　本屋さんは三階にある。
　璃愛の質問に頷いて、それらしい本を探している最中だ。
　インターネットで見た表紙絵の記憶を手繰り寄せながら。
　幻想的な雰囲気の絵だった。
　青を中心に描かれた、爽やかな絵。


「んー、ないね」


　もしかして本当に売り場が変わったのかな。
　璃愛も困った顔をしている。


「私、店員さんに訊いてくるよ」
「じゃあ私も行く！」


　これ以上探しても時間の無駄だもんね。
　本を買うときは毎回この本屋さんで買っているから、慣れているといえば慣れている。
　そこで待ってて、と言おうと思ったのだが、ついてきてくれるみたいだ。
　璃愛のこういうとこ、好き。



「すみません、本を探してるんですけど……」


　本を棚に入れているお姉さんに声を掛ける。
　書名を伝えると、人の良さそうな笑顔で頷いてくれた。
　営業スマイルってやつだろうか。
　大変そうだな。


「新刊案内ってところにあるんですよ。こちらです」


　二人でお姉さんについていく。
　お姉さんは私たちの目当ての本を迷いなく手に取った。


「これですか？」
「そうです、ありがとうございます！」
「いえいえ」


　レジで調べたりするんだろうと思っていたのだが、案外早かった。
　あのお姉さんも此の本の読者だったりするのかな。
　にっこり微笑んだ顔が可愛らしい人だった。


「良い人っぽかったね」
「うん。私、買ってくるね。後でお金渡して？」
「分かった」


　割引券は璃愛が持ってきてくれたから、その方が良さそうだ。
　
　
　わくわくする。
　本を目の前にして、レジに向かう時間も惜しいくらい。
　色とりどりの景色の中で探してた物だから？
　そんな気がした。

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