鎖を解いて、その手を伸ばして

24＊にらめっこしたら ページ24

　お休みの日は、何もなくても好きだ。


　壁に掛けてある、羊をかたどったカレンダー。
　くるんとした目が可愛らしい。

　私は、そのひつじちゃんとにらめっこの真っ最中。
　ただいまひつじちゃんが三連勝……というのは、丸きり冗談。
　にらめっこなんてしていない。
　でも、もし本当にしていたら、私の完敗だろう。
　だって、頬が自然と緩んでしまうから。

　
「今日、何着ようかな」


　言いながら、再びベッドに潜り込む。
　毛布がふわふわで気持ちいい。
　暫(しばら)く頬ずりして感触を楽しんだ後、ようやくベッドを降りた。
　カレンダーの前に立って、今日の日付をなぞる。
　お気に入りのペンでくるりと囲んだ、少しだけ特別な日。

　今日は、小説の新刊が発売日だ。
　それも璃愛と話していた例の本の続編。
　表紙はライトノベルにも似ているけれど、純文学っぽいあの本。
　インターネットで公開された表紙を見たり、宣伝を読んだりとずっと楽しみにしていた。
　
　
　その本が好き、っていうのも当然ながら理由のひとつ。
　でも私にとってより比重が大きいのは、璃愛と行けること。

　続編が発売されることを彼女に教えたら、すごく喜んでいたっけ。
　

「もうすぐじゃん！ 今から楽しみすぎるよ」
「璃愛も買うなら、二人ともってこと？」
「そう、なるね」
「じゃあさ、お金は半分ずつ出して、交代で読むってのはどうかな」
「それいいね！ 本だったら教室でも部室でもこそこそ渡すことないし」


　朝読書の時間に本は必要だから、気軽に渡しあえる。
　私の提案に、璃愛は満面の笑みで応えてくれた。

　折角だから発売日に買っちゃおうよ、という璃愛の言葉に私も賛成して、今に至る。
　

　とりあえず、待ち合わせの時間には遅れないようにしないと。
　昼からだから心配する必要なんて全然ないけどね。
　
　お気に入りのスカート穿いて行こうかな。
　考えながら狭いクローゼットを開けた。

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