猫かぶりの裏の顔2【奈良坂透】 (ページ45)

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私は考えている。

｢…｣

天気はいいのに、心の中は曇りに曇っていた。
お昼休みの時間、外の木と生垣の陰になっている膝くらいの高さの石の上で昼食を食べている。

｢Aちゃん、何か悩み事でもあるの？｣

あまりにもむっとして無言が続いていたため、現在お試し期間中の山谷先輩は心配そうに私の顔を横から覗き込む。

｢ちがいま…いや、悩み事かもしれないです。｣

ため息を吐きそうになったのを堪え代わりに微笑んで見せた。

｢なに？話してみて｣
｢話す程のことじゃないんです。｣

この関係が始まってはや一週間。一日目では特に進展というものは無かったが、二日目からはこうしてお昼を食べ、帰りは一緒に途中まで帰る。お互いを知るという目的のもと、話をしているのだ。

ちなみに、どうして私を？と聞いたところ『そりゃ顔かな。実際よく知らないんだから、第一印象で決めるのは当たり前でしょう？』だそうだ。

反対に私が断わらない理由を聞かれたら『誠実そうだから』と答えた。当たり障り無いくらいで丁度いい。

話は戻り悩み事。
言わずもがな、透の件だ。

同じ恋愛未経験というのに、透のアドバイスは的確だ。
一日目のお昼も誘われていたが『せめて新学期初日くらいは教室で食べろ』と言われた。ハッキリとした理由はないが、なんとなくそうしたいいのは確かに同感だった。

そんな感じで、今後もアドバイスが欲しいと思い話しかけようとするのに、ひらりひらりと何かしら理由を付けて避けられている。

友人には山谷先輩に気を使っていると推測していた。しかし、長い空白期間があったとはいえ透は幼馴染であり、家族みたいなものだ。

居心地のいい隣人を離してまで、この人と本格的に付き合うというのがそんなにいいこと？そう疑問に思い始めた。

(どうしようもなく、惹かれる相手ならこんな疑問すら起こらないよね？それこそ、視線が交われば溶けるようなくらい…)

｢っ！｣

あの時の事を思い出し体温が沸騰したみたいになる。食べていたものが喉に引っかかりむせてしまい、肘で横に置いてあった水筒が地面に倒れる。蓋の締めが甘かったのか中の麦茶がジワジワと地面を濡らす。

｢大丈夫！？｣

山谷先輩は私の背を叩き、私はハンカチで口を押えた。

｢ｹﾞﾎｯ…すみませ…｣

落ち着くと、先輩は地面に倒れた水筒を拾い砂を払う。

｢お茶買ってくるよ。待ってて｣

お礼を言う間もなく自販機の方向へ向かう。
私は俯き、赤くなった顔が鎮まるのを待った。