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今日は簡単に出前をとった。お弁当にインスタントのわかめの味噌汁が用意される。
出前はかなり久しぶりでこれがなかなか美味しかった。なにより、いつもと違う環境で普段しないことをするのは特別感があって楽しい。
「悪いな。こんなのしか出てこなくて」
「いえ、とても美味しかったです」
由紀は先に風呂に入りにいった。泊まらせてもらう代わりにお椀と箸を洗い水切り付の食器用棚に置く。
「まぁなんだ。実家とまではいかないがゆっくりしていってくれ」
「ありがとうございます」
リビングのソファーに座る荒船さんから間をあけて一番端に座る。
すると、立ち上がり冷凍庫に向かいガザガサと漁りはじめた。すると、中から棒付きのパキッとするチョコが混じったアイスが出てきた。それを私に「やる」と渡してくる。
「いいんですか?」
「あぁ。まぁ、その代わり色々話聞かせてくれよ」
「話、とは?」
そう聞き返しアイスの封を開ける。
「奈良坂は一応後輩だし、ポジションも今は同じで結構話すこと多いから」
日常的に接点が多い人だったのか。学校もボーダーも家にいない時の行動は全く分からないが知り合いに急に彼女がいると分かったらそりゃ気になるだろう。
「そういうことですか。といっても面白い話なんて…」
お泊まりに恋バナは必須と聞いたことがある。ただ、私達は真面目に付き合いすぎて盛り上がるようなことは思い浮かばない。
「ばーか、面白おかしい話聞いて笑うために聞いたんじゃねぇからな。ここに来て何回も画面確認してるの見たら気になって仕方ないだろ」
「あ…」
無意識にそうしていたことに気づく。
なにか一言でもメッセージが来るんじゃないかと思っていた。今のところ何一つとして来ないけれど。
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