猫かぶりの裏の顔2【奈良坂透】

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陸上部のあと、図書室で漢字問題、化学室で反応式、映像室で記憶問題、調理室で味覚問題などなど。

Aは全てを問題なく通過して上機嫌だった。


｢順調順調〜、あと1問ね｣

｢といっても一通り回っちゃったけど…｣

閉鎖されている屋上以外を一週してしまった。指揮権を千葉涼香に譲ってしまったため、企画者でありながら、自分はその詳細を知らない。そのため共に行動していることを許されてはいるのだが。


｢おやおや、お困りのようだねお二人さん｣

｢ひっ！？｣

突然後ろから背筋をつつつっと指で擽られぞわっと寒気が走る。

｢千葉ァ！｣

悲鳴に似た声を上げ後ろを振り向くと、ニヤニヤと不快で嫌な笑みを張り付かせたAよりも小柄な姿が。
長身の自分と並ぶと小学生のようで、ショートカットの髪はより制服を着ていても幼さを感じさせるが立派な18歳だ。

｢千葉ちゃん｣

Aも勝手に商品にされた恨みがあるため、笑ってはいるが目は怒ったように細め声も冷ややかだ。

｢おわーこわ！まぁまぁ私も反省してるよ？ちょっとした好奇心さ｣

このように反省する様子はまったく見られない。自分の周りには椿やこいつのような、嫌な笑みを浮かべる女子しか近づかないみたいだ。
猫のように首根っこを掴み、どう説教をするべきか考えているともがき出す。

｢従姉妹の仲だろー！こうやって救いの手を差し出してあげるんだから少し情状酌量を貰いたいと思って放送室から抜け出してこうやって身一つで出てきたんだぞー！｣

｢恩着せがましいぞ｣

何が救いの手だ。と訝しげに、雑に脇に抱え奇妙な状況のまま歩き出す。

｢こんな扱いをしていいと思ってるのか！？｣

｢はいはい｣

耳の縁をかきながら適当に返事する。千葉は抱えられたまま腕を組み雑な扱いに不満の声を上げる。

｢もう既に6問クリアした人がちらほら出てきているのに、悠長にしてたらどこぞの馬の骨とも知らない男にAのデート権が渡るぞ？｣

｢誰のせいだと…！｣

｢嘘っ、速くない？私達結構急いだのに。｣

Aは千葉へのツッコミを諦めた。予想では周りは5問もいってないだろうとは思っていたが外れたようだ。流石によく分からない相手が迫っているというのは不安だろう。

自分も企画した一人として申し訳なさと焦りが混ざり変な汗をかく。

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