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捕虜を収容するには随分と整った部屋だ。地下にあるだけで部屋の構造などは全く一緒である。ただ、窓がなく日光が取り入れられないだけで閉塞感がある。
「すまない。頭の整理が出来るまで顔を見せたくなかった。」
一応当主の娘である自分に対し、申し訳ないと思っているような声のトーンで釈明する。それに対し私は明るい声で返す。
「そんなことだろうと思った。最初聞いたら驚いたけどね。」
私が玉狛に居る間もずっとここで考えていたのか。確かに考えるにはちょうどいい静かさ。しかし息が詰まる。
「それより、随分な馴染みようだな...正直目を疑ったぞ」
ヒュースはいつ間にか後ろに回って私をベッドの上に座らせる。そして自分は立ち壁に背を付け座る。いつもの事なのでスルーして話を続けた。
「ヒュースもそのうち分かるよ」
「こっちは一年間心配していたんだ。ジェイドの件もある...俺が居なくなったらジェイドがどうなるか。誰も止められなくなる前に国に戻らないといけない」
あぁ、そうだった。まだ知らないまんまだった。
このことを知っているのは未来を見た迅さんと、話をしたクローニンさんだけ。それを知らずに悩み続けていたのは少し不憫だ。
「それなんだけど...落ち着いて聞いてね。
ジェイドはもう、死んでしまったの。大規模侵攻の時、兄さんと話した後に。」
こっちを見て目を見開く。一瞬何かを言おうとしたが下唇を噛み言葉を発するのを止め、斜め下に目をそらす。
「そう、か...一体どんな顔をしていた？」
私よりも傍にいたヒュースはまた違う思いを持っているだろう。当主と配下ではなく、親友として過ごしてきた。精神が不安定だった兄を支えようとしてきただろう。
「すごく、幸せそうだった」
「笑ったのか？」
「兄さんが居た時や、大好物の料理が出てきた時ぐらい」
「そうか、それはそうなのか。なら、良かったのかもしれない。きっとオレには分からない裏側をあの人は理解したんだろう。」
寂しいんだけど、幸せならそれでいい。そんな感じ。私がいない1年間近くで苦しんでいたのを見てきたのだろう。私みたいに泣くなんてこともしない。
「ねぇ、私が居なかった一年間の話聞かせてくれる？兄さんとは決別をつけたけど、それでも何があったか。家の事は娘として分かっておきたい。」
ヒュースはすぐに頷く。
「勿論だ。知る限りのことを教えよう。」
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