ハチミツよりも甘い 2

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潤んだ目から涙を流さないように必死に堪え、ゆっくり振り向いた。

その姿をもう一度確認したい。

本当に宏光がここにいるの？

「なんで泣くの…」

我慢できずに一筋の涙が頬を伝った。

それを見て私の手をそっと離した宏光は、少し困惑したような表情だった。

「…この瞬間が信じられないから」

そう言って私は駆け出した。

追ってこないで。

今は何も考えられないの。









家まで全力で自転車をこぎ、走って部屋のドアの前まで行った。

部屋に入ってハァハァとあがる息を整えようと玄関に座り込んだ。

流れる汗もそのままに、しばらく放心状態でいた所に海斗が帰ってきた。



「うわっ、何してんの」


玄関を開けたらいきなり私が座り込んでいたから驚いたみたい。

私も慌てて立ち上がり、スカートのホコリを払った。

「あ、お母さんってば ボーッとしちゃってた」

「玄関に座るとかボーッとしすぎだし」

ふふっと笑いながら洗面所へ行き、手を洗う海斗に宏光の事を聞いてみた。

その笑い方、太輔にそっくりだよ。




「ねぇ、あの北山さんだっけ？いつからサッカー教えてもらってたの？」

「えっと…1ヶ月くらい前かな」

「そう…」

宏光は気付いていたんだろうか、この子が私の子だって事に。

「なんで名前聞かなかったの？」

「だってサッカー教えてもらうだけだし」

「それでも知らない人なんだから、最初にちゃんと聞いて」

「僕は教えたよ！」

いや、そんなドヤ顔されても…

それでもしかしたらって思ったのかな。

「あとお父さんとお母さんの写真も見せた！」

そういう事か…

それは嫌でもわかっちゃうよね。



「北山さんの事、お父さんには内緒ね」

「なんで？」

「だって…心配するかもでしょ？」

「わかったー」

とテレビを見ながら適当な返事をする海斗。

もう…大丈夫かな。

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