愛されたいのは

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まだ半分も飲んでないのに、太輔さんは勝手に千賀さんに これ下げてって言って、飲み物を水に変えられた。


「まだ飲みたかったのに」

「明日仕事でしょ。もうやめといた方がいいよ」

「平気です。これくらい」

「ご機嫌ナナメだね、今日は」


その言葉には答えず、仕方なく水を飲んだ。

さっきまであんなに楽しかったのに、今日は何を飲んでも全然酔えない。


「もうすぐ終電だから帰ろう」


って言う太輔さんに返事もせず、お金をテーブルに置いて席を立ちコートを着た。

お店を出る直前に太輔さんは小声で渉さんに「ありがと」ってお礼を言ってたのが聞こえた。

本当におせっかい。









駅まで私を送ってくれる太輔さんは一言も話さなかった。

こんなワガママ娘みたいな私に幻滅したよね。

だって今日はむしゃくしゃするんだもん。

いつもみたいないい子じゃいられない。

改札の前まで来て、太輔さんはいつもみたいに向かい合って頭をポンポンってする。


「気を付けて帰ってね。時間ないから走って。転ばないでよ」


って優しい笑顔で言う。

どこまで優しいの？

こんな不機嫌で面倒くさい今日の私にもいつも通り接するなんて。








後ろを振り返れば、駅には電車が入ってくるベルが鳴り響く。

それでも私は太輔さんの前を動こうとはしなかった。


「ほら、何してんの、行かないと」


私はもう一度太輔さんの方を向き、その目を見つめた。

太輔さんもそんな私の目を見つめる。

お互い無言で見つめ合う時間。

その間に最終の電車はベルの音を響かせた後に出発した。


「………Aちゃん、これがどういう事だかわかってる？」

「わかってます」

「……後悔しない？」

「どうして後悔するって思うんですか？」


質問を質問で返すなんて、今日の私は本当にやっかいだ。

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