愛されたいのは

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「いらっしゃいませ。あ…Aさん」

「こんばんは」


あの後、なんだかまっすぐ家に帰る気にもならなくて、千賀さんのバーに来た。

先客がいて二階堂さんかと思ったけど…そこにいたのは渉さんで、なんだか気まずい。

渉さんは私に忠告して以来お店には来てなかったから、ずいぶんと久しぶりな気がする。


「こんばんは」

「こんばんは」


挨拶しながらも私は渉さんから1番遠い席に座った。

「あれ？2人知り合いなの？」

って無邪気に聞いてくる千賀さん。


「太輔さんと時々お店に来て頂いてて」

「あ、そーなんだ」


からの沈黙。

さすがに千賀さんもこの雰囲気に気付いたみたいで、何飲む？この前のピーチのやつ？なんて努めて明るく振る舞ってくれた。


「マティーニください」

「えっ！？結構強いお酒だけど大丈夫？」

「はい、大丈夫です」





どうぞ、と差し出されたマティーニ。

オリーブ嫌いだからオリーブはいらないって言えばよかった。

向こう側が見える程の透き通った透明な液体。

私の不安定な心とは真逆。

一口飲むだけで喉が熱くなるのを感じる。

これをゆっくり、チビチビと飲んでいると、扉の開く音がした。

そして私の隣の席に座ってきたのは…


「太輔さん…」

「何してるの」

「お酒飲んでるだけ」

「そんな強いお酒、普段飲まないでしょ」


私はチラッと渉さんの方を見たら、一瞬目が合ったけどすぐにそらされた。

余計な事して。

渉さんが太輔さんに連絡したんでしょ。


「私服、初めて見ました」

「そういえばそうだね」


今まで会った事あるのは仕事中や仕事終わりばかりで、いつもスーツだったから。

ジーンズ履いてる太輔さんはスーツの時よりも少し若く見える。

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